「変な家」という本が売れているらしい・・・というのは、ボンヤリと知っていました。
どうせ実話系怪談の類だろう。
それが子供相手にヒットしたのだろう、くらいの認識で、本当にまったく興味を持ちませんでした。
映画化されても、やっぱり興味無し。
しかし、その感想を見たら観たくなってしまったのです。
雑な作り!
原作と全然違う!
ババアがチェーンソーを振り回す!
石坂浩二が出てくる!
高嶋政伸が暴れる・・・!
またJホラーがやらかした。
それは間違いなさそうなのですが、今回はもう徹底的にはっちゃけたイメージを受けたのです。
最近映画をあまり観に行っておらず、明らかに観るべき話題作、問題作は他にある。
でも、今は「変な家」が観たい、というか確認したい気分なのでした。
それで劇場に行ったら驚いた!
平日なのに学生どもがウロウロ、ドッサリ。
もう春休みなのでしょうか。
いつもは閑散としている売店にも、長い長い列。
コーラにフードがじゃんじゃん売れています。
若いって経済効果!
それがみ~んな「変な家」に吸い込まれていく・・・。
この原作ってそういう層に人気があるやつなんだ。
愕然としました。
修学旅行に混ざってしまった感じです。
上映前の予告も、明らかにティーンを狙った感じの、耐えられない映画のコンボで、意識が薄れてきました。
もうダメだ。
それが、映画が始まってみると、案外そんなチャラい感じはありません。
シリアスな雰囲気で、フザけたムードは無し。
なにより、佐藤二郎の演技が素晴らしく好感が持てます。
家の間取りを見ただけでスルスルと出る不気味な仮説。
なんだこれ、すごく面白いじゃないか!
・・・まあ、知っているのです。
おそらく原作に準拠しているのは序盤だけで、これからどんどん壊れて違う内容になってしまう事を。
そしてそれを楽しみにして来たクズ客である俺!
学生の皆さんはコーラを飲み、ジャンクフードをモリモリ食べながら(経済効果)、すっかり映画に夢中です。
音でバーンと驚かせば、ちゃんとビックリしてくれます。
思い出すのは、「牛首村」の劇場で、あんなポンチ映画に本気で恐がっていた少女です。
「音で驚かせるタイプのホラーは質が低い」等と、したり顔で語るシネフィルは間違っています。
みんなこれで楽しいのだ!
映画の内容は、まあまあ退屈になってきました。
村のしきたり?左手供養?
なんか「樹海村」みたいな感じになってきたな~。
しかし、いよいよ村に行けば、ようやく楽しみにしていたシーンが続々と登場します。
みんな頑張っている(特に高嶋政伸)。
誰も悪くない。
・・・でも、もう一つ気持ちが盛り上がりません。
観終わってみれば、決して悪い印象は無いのですが、何か物足りない気分です。
思ったほど弾けていないのです。
「もうどうにでもなれ!」というヤケクソ感が無かった。
ただ、本当に一生懸命作った感じは伝わりました。
そもそも、この映画の企画自体が無茶なのでした。
観終わった後にYouTubeで原作と言える「変な家」の動画を見たのですが、もうこれで完全に完成されているからです。
そんなのは誰にでも分かっている事実。
でも、ビジネスとして誰かが映画化をしなければいけない。
誰か、やる者はいないか?
お前、できるだろ?
いや、まあ、はい・・・。
そんな苦しく険しい挑戦だったのだろうと思います。
「変な家」は、ホラーではありません。
純然たるミステリーと言っても良い内容です。
動画でも、登場するのは白いマスクを付けた人物が電話をかけているだけ。
この限られた情報量が、絶妙な面白さを演出しているのです。
それを、「適当にホラーっぽく恐い映画にしちゃって。」というオーダーだったのでしょう。
そうするべきではないかもしれないが、そんなオーダーにも応えなければならない。
それが社会人としての務めです。
こういった無茶な仕事を請け負った場合、あなたならどうしますか。
とりあえず、過去の先輩がやった資料を見ますよね。
なるほど、こうすればとりあえず映画になるのか。
あれとこれを組み合わせ・・・とにかく後はみんなに助けを求めよう!
石坂さんと高嶋さんに電話だ!
斉藤由貴さんも暇そう?お願いします!
ファッション童貞のDJ松永もヨロシク!
本当に真面目に作ったと思いますよ!
中田秀夫の500倍は真面目です。
とにかく出来上がった。
評価は散々。
でも、そんなクソシネフィルなんかより、経済効果の高いティーン達がどっさり劇場に来てくれた!
これは、輝かしい成功と言って良いのではないでしょうか。
本当におめでとうございます。
ヒットしたので、次回作のオファーもありそうですが・・・。
さて。
映画の方は微妙に楽しめなかった自分ですが、原作者の雨穴さんの動画に激ハマリ中。
「変なAI」とか、ミステリーとしてなかなか感心しました。
ガキ向けコンテンツだろ、なんてバカにしないで欲しいです。
本の方も買ってみようかな!
結果的に、メディア戦略にすっかり乗せられてしまったわけですが。