またもや、昨年面白いと話題になり、興味はあったが劇場へ行かなかったパターンの映画です。

これ観に行けば良かったと思える、スカッとした傑作でした!

今更なんでこんな題材の映画を?と思う人も多いと思いますが、これは実際観てみるしかありません。

とにかく面白いんだから!観てみてよ、としか言えないのです。

 

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」というものが何か、知らない人の方が多いでしょう。

僕もそれほど知っているわけではないのですが、どういうものかは知っています。

それは、僕が中学生くらいの頃「ゲームブック」に激ハマリしていたからです。

当時は結構なブームになって、実に様々な作品が大量に刊行されていました。

 

ゲームブックというものは、簡単に説明するといわゆる「ノベルゲーム」を本のスタイルで遊ぶように作られたものです。

読んでいると途中で選択肢があり、Aをするなら〇番へ、Bをするなら×番へ、と指示があるのでそのページへ行くと、その先のお話が読めるわけです。

このスタイルの火付け役になった「火吹山の魔法使い」は元々、テーブルトークRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の世界観で作られていて、初期のゲームブックはほとんどがこの世界観のお話でした。

テーブルトークRPGとは、プレイヤーを務める複数の人間と、ゲームマスターと呼ばれる一人の人間により遊ぶ、ボードゲームの様なものです。

ゲームマスターが状況を説明し、それを聞いたプレイヤーが何をするか伝え、その結果をゲームマスターが「自分で考えて」話すというやり取りを繰り返すというもの。

もちろん、基本的なルールブックやシナリオはあるものの、ゲームマスターの仕事が過重過ぎませんか?

今でいうロールプレイングゲームというのは、その大変な仕事をすべてコンピューターにお任せしたものです。

まあしかし、その場でのアドリブや対話自体が面白かったのでしょうが、なかなか敷居の高い遊びだと言えます。

 

・・・長くなりました。

日本では「ドラゴンクエスト」のヒットにより、この世界観はすっかり定着し、今では「異世界」と言えば大体こういったものを指すのだと思います。

ゲームに対し、映画ではあまりこういう作品は多くありませんが、やっぱり「ロード・オブ・ザ・リング」三部作が圧倒的だったでしょう。

あれを超える事は難しいため、結局あの作品以降も同様の世界観の映画はあまり作られていません。

 

そんな中で登場した本作ですが、これまでのファンタジー系作品と大きく違うのはかなりコメディ色を強く前面に出している点です。

感覚としてはマーベルのヒーロー映画に近いです。

でも、マーベルの作品でもここまでシンプルに面白いものはいくつあるでしょうか?

 

王道の世界観の中で、しかし主人公達の設定や繰り広げる物語はちっとも王道ではありません。

邦題では「アウトロー」となっていますが、要は「盗人」です。

しかも、ムショの中からスタートします。

 

盗人チームのメンバーは、主人公(盗人リーダー、指示役)、ミシェル・ロドリゲス(ミシェル・ロドリゲス)、ポンコツ魔法使い、詐欺師。

この内、詐欺師が案の定裏切り、新たに仲間になるのが、様々な生きものに変身できる娘(まあまあのチート性能!)です。

彼らは個性派ぞろいで、常に冗談を言ったりしながら行動します。

アベンジャーズの様な圧倒的性能が無いところが好印象です。

 

また、どこかにある魔城とか地下迷宮に行くのではなく、金持ちになった詐欺師から主人公の娘を救いだすという、スケールの小さなお話です。

ただし、詐欺師の裏には恐ろしい存在がいるため、思った以上には大きな話になっていくのですが・・・。

 

色々と無茶、無理難題ばかりを言うプレイヤーと、比較的寛大なゲームマスターによるテーブルトークRPGという感じで、荒唐無稽な展開が次々と訪れます。

いかにも用意された展開ばかりのテレビゲームっぽくないのは、意識しているのでしょうか。

一つの難題にも、今持っている道具や自分の能力を創意工夫して対処しようとする場面はなかなか感心したり笑ったり。

スーパーパワーでドラゴンもやっつける!とはならないのです。

 

この映画を観て思ったのは、やっぱりちょっとした描写の巧みさです。

ちゃんと笑える。

ちゃんと泣かせる。

そうするには、本当にささやかなセリフだったり描写だったりが大事になってくるのです。

こういうフォーマットの大作はたくさんありますが、これの出来ていない、何も感情を揺さぶらない作品の多いこと!

 

2時間以上ある結構長い映画ですが、本当に短く感じました。

僕がそう感じるのは、結構異例です。

いつもの典型的なハリウッド大作の様で、実はここまで上手い作品はなかなか見当たらないと思います。

もうアメコミなんか観ねえ!と食傷気味に思っている方にこそ、オススメしたい傑作でした。