この映画の設定を聞いた時に、これは絶対面白いと思いました。

それで実際観たら、当然のように面白い。

これは、全然当たり前では無い、凄い事です。

 

この映画を制作したヨーロッパ企画というのは、上田誠さん主催の劇団を中心に行う団体で、長編映画としては「ドロステのはてで僕ら」に続く作品です。

「ドロステのはてで僕ら」も、評判を聞いて観たら、えらく面白いSF作品でした。

1階と2階で「時間が2分ずれる」という設定から発展していく物語。

低予算、限られた舞台の中で、見た事の無いものを見せてくれ、非常に感心しました。

 

 

今回も2分です。

2分経つと、強制的に2分前まで戻ってしまうという設定。

ただし、自分も周りの人間も、意識は継続している。

そして、この2分間は常にワンカット。

非常に魅力的な、うまいアイデアだと思います。

 

最初、2分間では何も物語を進められないじゃないかと思います。

実際、あたふたしている間にすぐループしてしまいます。

ところが、状況を理解し、やるべき事を明確にする事で、2分間で出来る事はどんどん広がっていきます。

行動範囲も広がっていきます。

主人公は2分ごとに元の場所に戻ってしまうので、これを延々と繰り返し見せられるのは退屈じゃないかと思いそうですが、全然そうではないのです。

 

この感覚は、例えばゲームでも感じる事です。

タイムアタックを繰り返していると、序盤では考えられないくらいの行動が、同じ時間内で可能になっているのを実感できます。

 

かつてプレイステーションで発売された「MOON」というゲームを思い出しました。

これは、主人公は一定時間経つと必ず最初の家に戻ってしまうという設定です。

その範囲内で様々な行動をとり、レベルアップするとその時間が増えていき、徐々に遠くまで行けるようになるのです。

周りのキャラクターもリアルタイムで行動しており、それらを観察する事で攻略が可能になったりするので、今回の映画とも共通する部分が多いと思います。

 

 

この映画の設定のゲームをやってみたいと思いましたね。

知識は増えても、物自体は元に戻ってしまう。

書いたものは消えてしまう。

しかし、他の人間に依頼すれば、他の場所の物を移動させたりする事が可能になるのです。

徐々に時間が増えていったら良いかとも思いましたが、むしろ2分で完璧にクリアできる方が面白いかもしれません。

すべてのキャラを自分で順番に操作して、全員に正しい行動を取らせると目的が達成できるとか。

 

映画の話に戻りますが、最初はこの時間ループに翻弄される様を面白可笑しく描くだけですが、次第に「どうしてこうなったのか」「どうすれば戻れるのか」を考える様になったり、人間同士のトラブルが発生したりで、ずっと興味は尽きません。

途中で「ああ~いかにも邦画っぽいノリになってきてしまった・・・」とテンションダウンな展開もありますが、さらに展開していくので大丈夫です。

 

終始ユーモラスな展開が続くのかと思いきや、割と不穏な場面も登場します。

決して深刻になるほどではありませんが。

そう、この映画の設定なら、かなり怖い展開にする事も可能なのです。

その方がインパクトもあるし、世界にもアピールしやすいでしょう。

 

でも、あくまでもコメディに拘るのがヨーロッパ企画の味なのです。

これは前作にも感じたものです。

コメディだから適当でいいんだ、という投げやりな感じの無い姿勢は大いに評価したいと思います。

 

ちょっと前に、時間ループSFが世界でも多く作られた時期がありましたが、ヨーロッパ企画の2作、及び「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」なんかは、決してそれらの作品に引けを取らない、むしろかなりの傑作の部類になると思います。

日本でも、低予算でも、アイデアで勝てる!

思えば、Jホラーだって、最初はこういう強さを持っていたと思います。

 

個人的には、最近は長尺な大作よりもこういう作品の方が素直に楽しめる気がするので、今後も意欲的に作っていって欲しいですね。