ギョギョギョ!でお馴染み、合法不審者こと「さかなクン」を、ジェジェジェ!でお馴染みの能年玲奈が演じるという、不穏な映画です。

最初にこの企画を聞いた時は、何度その説明を聞いても意味が良く分からず、ザワザワした気持ちを抑える事が出来ませんでした。

もちろん、劇場へ行く勇気や根性もありません。

 

さかなクンは、デビュー当時(それが明確にいつかは不明だが)から大好きでした。

「アッ、テレビに不審者が出てらぁ」と思わず引き込まれるビジュアルと、高音ボイスによるノイズサウンド、そして「ご」を「ぎょ」に変化させたまったく新しい言語。

彼の出演時間は長くないのですが、独特の緊張感とトリップ感が癖になり、最初は衝撃の強かった彼の存在も、いつしか楽しみにしてしまうほどになりました。

これは薬物依存に近いかもしれません。

 

こんな劇物を、劇場へ持って来ようというアイデアは納得できます。

映画の根本は見世物。

現実では味わえない刺激を、暗闇でひっそり楽しむものだからです。

 

しかし、さかなクンを演じるのが、名前を奪われるというリアル「千と千尋の神隠し」騒動で話題となった能年玲奈さん?

ハァ!?

能年玲奈って男性だっけ。

いや、待て。

さかなクンの「クン」がミスリードだったのか?

 

どうも単純に「女体化」だったみたいです。

そう言えば、魚にも性別が変化するものがあるみたいで、クマノミなんかもそうだとか。

「男か女かはどっちでもいい」と冒頭にも出ますが、そんな事を言って多目的トイレに入ったら逮捕されるかもしれませんよ!

 

それで、wowowで放送になったのをようやく観てみたのですが。

上記の思いでモヤモヤしながら観ていると、なんと本物のさかなクンが大登場!

コレコレ!

これがさかなクンだよ!

一気にテンション上がりましたね。

 

彼の役は・・・不審者?

少女にベタベタ話しかける、頭に魚の帽子を被った、普通にホンモノの役でした。

あんまりじゃないか。

種明かしすんな!

さかなクンありきの企画なのに、リスペクトが無さ過ぎです。

そして彼は、普通に警察に任意同行となり、そのまま出てこなくなります。

酷すぎないか?

 

映画自体はゆるふわムードの人情コメディとして進み、終わります。

なるほどね。

要は、能年玲奈を主役にした「裸の大将」あるいは「フォレスト・ガンプ」がやりたかったのです。

日本人が大好きな、バカのサクセス・ストーリーです。

 

娯楽ジャンルの鉄板の一つとして、こういうのがあるのは理解できます。

能年玲奈の純真無垢なイメージも、ピッタリでしょう。

後で知りましたが、監督・脚本は「横道世之介」の人でした。

個人的にあの映画、苦手なんですよね・・・。

内容もそっくりでしたが、能年玲奈の力なのか、この映画は割と普通に楽しめたと思います。

 

でも、さかなクンってこういうキャラでしたっけ。

エキセントリックなのは間違いないですが、ギャラ交渉も一人でキッチリ出来るクレバーな面もありそうなのですが。

それに能年玲奈のさかなクンは、やっぱりヌル過ぎます。

あのハイテンションなアシッド感覚とグルーヴを、そもそも追求する気はないという感じでした。

まあしかし、能年玲奈の映画としてはこれくらいで良かったと思いますが。

 

できれば、ラストでもう一度さかなクンを出して欲しかったです。

出所した彼を迎えに行くとか。

屍の様に無気力になった彼に、あの帽子を被せてやると突然「ギョギョギョエ~!」とウルトラハイテンションになり、そのままジャンプしながら海まで走っていって飛び込み、魚になってしまうというラストだったら感動的でした。

あれが本体だったのか!