万眉の純情

はじめまして。


ただ今『日記文學』を鋭意執筆中でございます。


是非、お楽しみ下さい。

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ひとつの理解

なるほど。
例えば事件やらなにやら人が為す様々な行動の理由や、深層に在る意識を紐解き、掬い上げ、再構築するのも小説の役目か。

ゼズスの宗教

「善悪は人間の主観だ。
神様だって人間が勝手に作り出したものさ。
ゼズス流に考えるのなら、そいつはむしろ善人欲しさに殺したんだよ、きっと。
天上界に悪人は要らないってことかな。」

仙崎先生宅。
先生は続ける。

「ゼズスは神なのか人なのか。
昔の西欧人は考えたんだね。そうして、議論を重ねた。当然たくさんの考え方があった。
ゼズスは人であり、神にあらず。
ゼズスは人ではなく神そのものになりたもうた。
ゼズスは神であり、神たる父であり、かつその子である。
―――この最後の考えをいにしえの帝は“正統”と決めた。だから、それ以外は異端だ。異端。異端を信ずる者には、
死。」

「どうでもいいじゃあないか。ゼズスが神であろうが父であろうが何だろうか。どうせ、神だとているかいないか分からない代物だ。そいつを拠り所にしている者たちにとってはどうでも良いことなのに、余計な混乱を招いて何だというんだ。
僕には一連のゼズスの宗教こそ、ゼズスその人が企んだ悪だくみのような気がしてならないんだ。」

先生宅に蔵本と二人で伺った。蔵本はいやに正直なやつで、先生の著作はどれひとつとして読んだことがない、と平気で豪語した。今度貸してやらねばならない。正直な所が奴の持ち味としておく。あまりにはっきり言うので、自分は笑ってしまった。先生も奥様も笑っていた。

「中女史は“神様”に目をつけられたんだ。才能豊かでかつ、美しい彼女を。天界を彩る飾りにしたかったんだ…」

先生も「麗人春秋」は当然読んだとおっしゃった。先日與島女史が挨拶に来たらしい。以前受賞式で先生は中女史に実に丁寧な挨拶を受けたとの事。
惜しい人を亡くした、次回作を僕はお世辞でなく期待していたのに、ともおっしゃった。自分も至極同感だ。
菊の幻が枯れてしまいそうだ。


與島女史に今会いたい。

死と全知全能

驚いた。

與島女史から電話。
先に聞いた悲鳴の主、通り魔の被害者は中女史であったようだ。あの後程なくして亡くなったらしい。

中女史はちょうど一人息子を伴って帰路の中途だった。晩はどうしようか、と息子と楽しい心持ちでいたのを襲われたのだ。新人賞の受賞作が遺作になってしまった。
現場は本当に侘びしい所で、街灯も申し訳程度にしかない。時間も時間であった故、目撃者も今のところいないとの事。

幸いに息子さんは無傷であるとの事。中女史と、母様の亡くなった子息はさることながら、たった一人の妹御を亡くした與島女史が不憫でならない。
そして、一刻も早い犯人の逮捕、極刑を願って止まない。

ゼズスの宗教に定義する『神』という概念、否、存在が真にあるのなら、果たして全知全能とかいう神が悪人を懲らしめずに善人を殺すのか。
ならばなんと身勝手な神だろう。
なんとふざけた奴だろう。


與島女史のたいへん気落ちした様子が電話口からもよくとれた。

母を亡くした時を少し思い出してしまった。

自分にできることはないのだろうか。

通り魔

仙崎先生に電話。蔵本とともに訪問する約束を取り付ける。

昨日夜に悲鳴を聞いたが、あれは女が通り魔か何かに襲われて殺害されたとの事。以前も悲鳴を聞いた(たしか過去に記事を書いた。)のを覚えているが此の辺りも物騒になったものだ。

「麝香と錯乱」を再読。

送信

『冠省

 「麝香と錯乱」読みました。物凄い作品ですね…正直驚いてしまいました。たしかに「さみだれ伺候」も良かったのですが、こちらは一回りも二回りも上回りますね。まだ気持ちが高ぶっておりますのでもう一度読み直したく思います。素晴らしい作品の御紹介たいへん感謝しております。何かありましたらまた是非。
 
 文黎の原稿、頑張って下さい。楽しみにしております。大論駁は今まで読んだことがないのですが、先生の随筆が掲載されるこの機会に読んでみようと思う次第です。御返事は急ぎませんので、お時間ができましたら宜しくお願い致します。

ところで、先日の文学黎明新人賞の受賞作品はお読みになりましたか。中多恵女史の「麗人春秋」という長編小説です。すでに御存知かもしれませんが、中さんは與島さんの実の妹君だそうです。私は與島さんと同じくらいの年ですから、彼女の妹君は当然年下ということで、柄にもなく焦りを感じてしまいました。しかし先生に頂いた言葉を忘れずに、自分なりに精進しようと思い直します。御指導の程宜しくお願い致します。
 ではお言葉に甘えて、蔵本を連れて遊びに参りたいと思います。詳しくは後日こちらからお電話致します。
 先生と奥様お二人の末永い幸福を願っております。

  草々

  瀬田甫

仙崎篤郎 先生
      足下』
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