イギリスの綿が日本を席巻できなかった理由

  産業革命により綿工業の生産力を高め、世界を席巻したイギリスは圧倒的な力をもっていたが、アジア市場で主導権をにぎったのは、イギリスに100年遅れてスタートした日本であった。明治初期の日本の近代工業のあけぼのをテーマとする『日本文明と近代西洋──「鎖国」再考』(NHKブックス)という名著では、「綿」の品質・用途の違いー衣服の文化の違いーのために、東アジアで日本の綿工業が主導権を握ることができたと記述されている。それは21世紀にも起こっていると筆者は言う。

 日本と欧米との食文化の違いによって小売企業がなかなか日本の市場に進出・定着できず、撤退しているのではないかと。日本の小売業の基礎は、生鮮3品と呼ばれる鮮魚、肉、野菜・果物の「鮮度と多様性と旬」であり、それらの個人商店が圧倒的であったが、1980年代に関西スーパーやサミットストアといったスーパーマーケットが、生鮮3品に特化した組織的な技術やノウハウ、早い商品回転率といったことを生み出し、対抗してきた。

この早い商品回転率志向は、世界基準ではないために、テスコ、カルフール、ウォルマートといった世界大手が日本で苦戦していると筆者は分析している。

 

 最後に筆者は、日本の買い物行動は、日々変化ある店頭、小売店での迅速な商品入れ替えといったニーズ、第二に、地域ごとに異なる食材ニーズに対応する店への要請であり、「標準化された商品の週に一度のまとめ買い」や「Every Day Low Price」を標榜する欧米大手小売企業の戦略では、そうした要請に応えることはできない。
 食文化の伝統は、まさに独自の小売業を生み育て、そして海外からの参入の天然の要塞となって守っているのであるとまとめている。(要約)


TPPが取りざたされているが、TPPに加入しても、海外参入を阻止する天然の要塞となりうるのか?それは、欧米に対してであり、もしかしたら、その要塞を崩していくのは、東アジアの他国、韓国や中国かもしれない。でも根拠はないですけどね。