インディー映画として上映されたこの映画が日本アカデミー賞を受賞したのみならず、ほとんどの賞を総なめにしたには、何かわけがある、と思っていた。
感覚的に炭鉱で働く者の家族の女性が、家族のために、フラガールとして働くことで、炭鉱を救ったこと、炭鉱娘一人ひとりのフラを通しての成長物語であるということ、フラを踊ったこともない度素人の女の子たちと彼女らを指導する女性との関係の変化、その指導する先生の心の変化、そして最後の締めはひとときも目をはなすことのできないフラガールたちの踊り、など、もりだくさんなのに、もりだくさんだと思わせない、映像のつながり。私はこの映画で、観客にうったえかけたのは、いろいろあるだろうけど、私は人びとの心の通い合いではないかと思った。それを主軸にして上記のようなてんこもりの内容で一つの秀作ができあがった。
私がもっとも感動した場面は、次の場面です。
フラガールの身内のだれがが、炭鉱事故で生死があやぶまれる状態になったことで、「ここで残りたい人だけ残って」とみんなに言う。そのあとすかさず、「と、昔の私なら言っていた。さあ、かえりましょ。」という。そのあと、当事者のしづちゃんが、「踊らせてください。」って。
先生もしづちゃんも正反対のことを言ったけど、核の部分は同じなんじゃないかと思う。
あと、お母さんが、勘当していた娘のもとに、北海道へ行った友人からの小包を届けに行く場面。届けに行った学校で娘はフラを真剣に練習していた。
その姿を見てみぬふりをしつつ母は娘の気持ちに歩み寄った気がした。
そしてその小包には、フラをやりつづけたかったが、できない事情があった友人がこころをこめてつくった髪飾りが入っていた。
「ストーブ貸してくだせー」と、南国の木々が東北の寒さにやられないために、お母さんも炭鉱のみなにお願いに回る。「婦人会の会長が気でもふれたんでねーのか」と言われながら。
そこで、お母さんは言う。
「仕事は歯をくいしばって死ぬか生きるかだと思っていた。だけど、あんなように踊ってよろこんでもらう仕事があっていいんでねえの。笑顔で働ける新しい時代がつくられるかもしれん。あのこらの夢つぶしたくない。」
松雪がおどっている姿を見て、あんなふうに踊れたらいいなと思っていた少女が同じ演目で大舞台で踊る。
心の機知をふんだんにちりばめた、誰の心も離さないパワーを持った映画でした。
最初は映画館で、今回はWOWOWで見たんですが、必ずDVD買おうと思っている作品です。どちらにしようか、迷い中です。
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