ルイ・ヴィトン前にある看板に目が留まり、暫くじっと佇んでいた。 

美しいモデルさんが持っているルイ・ヴィトンのパピヨンという名のバックにくぎ付けになった。 「これ欲しいな!」 

店内に入って商品を見せてもらい、お金を貯めて買うことに決めた。

 バックを買いたいが一心に、昼夜バイトをして約3カ月後にあの時見ていた憧れのバックを手に入れた。  


「広告はこんなにも人の心を動かすものなんだ!私も同じように、人の心を動かせるような広告が創りた い!」 

大学3回生時のこの経験が、広告マンになったきっかけだった。  


大学を卒業してから 15年間広告に仕事をしている。 

 

様々な企業のサービスや商品のお仕事をさせて頂く中で、 「広告マンとは何か?」を考えて出した現時点の答えは、 「広告マンは長所を見つける、創る能力が優れている」と言うこと。 

 

長所を見つけ、新しい価値を作って世の中に発信する。 

それはうまく行けば、世の中の流行を創り、習慣になり、文化にもなる。 

 
例えば あるメーカー商品発売した「50 枚入りの美容パック」 パックといえば、1 枚数百円する高めの商品を週 2-3 回習慣が提唱されていたが、安価で大容量美容 パックの提案を機に「毎日美容パックをする習慣」が一気に広がった。  


私が実際に企画した案件では「敬老の日」という、年配の方の殆どが「受け入れたくない日」とマイナスに 捉えられている要素をプラスに変えるため、「お世話になった方への感謝をする日」と再定義し、プレゼント をもらう側も送る側も「気持ちがいいコミュニケーションができる」ように年齢関係のない歳時へ変化させるた めの広告を展開した。  
他には、バレンタインの「義理」という渡す側からももらう側からも「めんどくさい」と捉えられているコミュニケー ションを「逆に贈りたくなるコミュニケーション」にするため、「贈る人がたくさんいる=自分の周りに好きな人が たくさんいると実感できる日」と再定義し、広告を展開した。  


このように既存のマイナスと捉えられているサービスや商品、催事の長所を見つけ「プラスの要素に再定義して発信する」場合もあれば、世の中に埋もれいている「あまり特徴がない、或いはマイナスイメージである サービスや商品の長所」を見つけ、様々な角度から磨きをかけ、切り口を見つけて世の中に発信する事も 多々ある。  


口が裂けてもお客様の前では言えないが「売れそうにない……」と思うサービスや商品も多々ある。という か、クライアントから「あまり特徴がない」と言われることもあるくらいだ。  
しかしそこはプロである以上、商品であれば素材や使っている原料、商品がお客様に与えるメリット、他社 にはない長所などを見つけだし、新しい価値を付けて発信する。  


グレイティスト・ショーマンを見たとき、まさに「私がやっている事と同じだな!」と思った。 

 

当時世の中では差別されていた、身体的、人種的に不遇な立場にあった人々を集め「身体的、人種 的に不遇は個性」だと定義し、「みんな違うから輝く。誰も見たことのないショーを」とオンリー・ワンの個 性を持つ人々として讃えてエンターテイメントとして発信する…… そして 19 世紀のアメリカで「サーカス」という文化を創った。  

 


物語ではこんなエピソードもあった 主人公バーナムが作ったショーを観た新聞記者は、「大混乱」の意味で“サーカス”という言葉をタ イトルに使う。それを逆手に取り、自分のショーを「バーナムのサーカス」と名付けるバーナム。  
まさに発想の転換「プラス要素」にして発信している。 当時は「金儲けをするための見世物小屋」だと相当な批判を受けていたようだが、バーナムは「至高の 芸術とは、人を幸せにすること」と言っていたように、見る人だけではなく、  
バーナムがいなければ誰も私たちを「人間である」とは認めてくれなかった と、演者がバーナムに感謝の気持ちを述べていたという程、「観客も演者も幸せにするサーカス」で あったという。  


そう、書き忘れていた、私が1番大切だと思っている事がある。 「ワクワク感を創る」  
お! この企画売れそう! これやったらお客さんが面白がってくれそうだね!  
という、企画段階でクライアントと共有するワクワク感  


この商品を使ったら、ツルツルお肌が手に入りそう このサービスを使ったらモテるかな この商品を持ったら、モデルさんみたいになるかな  
広告発信後、お客さんがサービスや商品の先を想像しながらのワクワク感! ワクワクをたくさん創りたい。  


でも正直に言うと、忙しさに忙殺され 1 番大切だと思っていても忘れてしまう事が多々ある。 そんな時は、ルイ・ヴィトンのバックを持つことに憧れ、3カ月間ワクワクしながらアルバイトをしていた「初心」 に返ってみることにしている。  
大学3回生だった私が出会った「ワクワク感」をたくさんの方に届けていきたいと思う。