『北の路』（日光）－ 帰ってきた蕎麦麺漫遊記12。
栗山月山の帰り、まあ食べられないだろうから期待しないでと妻に伝えてから足を運んだのが、日光（旧栗山村）のお蕎麦屋さん「北の路」さん。山岳会に入る前、低山を自分なりに1人で登りに来ていた時分、よく足を運んでいたお店です。
「北の路」さんのお蕎麦を味わいたかったら絶対予約必須です。予約しないで食べられた試しがいまだかってないからです。予約しないで出向いても、必ず「今日は予約分しか蕎麦がない」とか「もう蕎麦が切れた」と言われます。
だから冒頭の言葉に繋がります。北の路さんは、なんとなく寄って食べられるわけないのだ。
こんにちは。まだ蕎麦大丈夫ですか
大丈夫ですよ
・・・・・・・やった！！
諦めたらそこで試合終了ですよ。データはデータ、次も必ずそうなるとは限らないのです。だから人生は面白い。やったー、やった、やった、やったー！
てなわけで、蕎麦と天ぷらの盛り合わせを注文。
天ぷらは季節の素材を揚げてくれます。今回のように春なら山菜尽くしですが、秋の茸尽くしは素晴らしいです。あれはまさに御馳走でした。思い出すだけで涎が。。
さて、肝心のお蕎麦。うん、美味そう、、ではまずは汁なしで。どれどれと、ずずず、もぐもっギャ!
えー皆さま、蕎麦を食べている際に脳みそをハンマーで殴られたような衝撃を受けたことがあるでしょうか？わたしは何度かあります。これは別に蕎麦でなくても起こる現象ですが、わたしは素人なので理由は推測です。わたしが思うに、この衝撃は鼻で嗅ぐことができない料理の香りが喉の奥から鼻の裏側を通じて脳みそに信号として届いた際に起きます。
お蕎麦の香りは鼻を近づけても嗅ぐことができません。匂いを放ってないのだから当然です。しかし、そんな蕎麦を口内ですすることで、摩擦により温めて香るわけです。だから、喉の奥ではじめて香る、蕎麦の香り。
まさか、ずずずずずぅ、もぐぎゃ！
嗚呼、わたしはこれを待っていたのです。これぞ蕎麦ですよ。いや間違い。断じてはいけない。当然好みはある。わたしもいろんな蕎麦が好きだ。こいういう蕎麦以外の蕎麦も好きだ。しかし、今回提供されたような荒めの粉を繊細に打ち上げている蕎麦、食感は繊細なのにこの衝撃波、見事じゃないか。美味い。もともと「北の路」さんのお蕎麦は好きだったけれど、☆評価で３．５くらいしかつけてなかった。今回４．５は間違いない。過去最高の蕎麦が提供されているじゃないか。下り坂になる名店は数知れず、５年後くらいの久々の訪問で、以前より美味い蕎麦を提供しているなんて、なんということだろう。あっぱれと言うほかない。わたしが書いたところでなんだけれども、書くしかないのだ、書きたいのだから。美味い！素晴らしい！美味い！
てなわけで、昔取った杵柄で店主としゃべりたくなって、話始めたら、これがまた話がとまらない。店主の奥様と妻にあきれられるくらい話し込んでしまった。店主もやはり蕎麦の質の低下は懸念されておられた。美味い蕎麦はいかにいい蕎麦粉を押さえられるかだ。店主は福島県のある農家さんから入手しているとのこと。それを適切に保管する。打つ分しかひかない。山菜も山奥の蕎麦屋だから地元で取っていると勘違いされるが、しっかり県外に定期的に取りに行っているのだとか。
温暖化のこの折に、産地だからとか、取れたてだからというだけで、美味いものが出せる時代はもうとうに終わっているのだ。自分のまわりに昔あったはずの「美味い物がなくなってしまったのなら、なくなったことを嘆いたり理由にしたりして無為に日々を過ごすのではなく、探しにいかねば。そこに新しい発見があるってもんだ。
店主の御歳でなお熱く、腕を磨き、工夫を怠らない。奥様の接客含め、本当に今回訪ねることが出来て良かったなと思います。美味しかったです。ごちそうさまでした。（おわり）
【日光】北の路 もりそば ☆☆☆☆★ ／ 天ぷらもりあわせ ☆☆☆★
【素材情報】
そば粉：会津産をほぼ十割で
つ ゆ：昆布、カツオ、シイタケ
薬 味：葱、わさび
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