近況505.紺碧の富士山滑降(14-15シーズン。9回目)@スノーボード | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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先日曜日に9回目のスノーボードへ行ってきました。これが今シーズンの滑り納めなので、念願の富士山BCに挑戦です。5月の富士登山を成功させるためには、兎にも角にも天気読みが重要です。当日の天気だけじゃなく、前々日からの気温や風も気にする必要があります。問題は山頂直下の斜面が凍結しているかどうか。ここが一番重要な点で、後は当日の風の強さと気温です。


因みに、天気は移動性高気圧に覆われたので日中ずっと晴れ予報。風は山頂の風速20m(最速時)と強いが、富士山なら許容範囲。気温も最低-1度と悪くない。今年のわたしは本当に天気に恵まれている。



前日夜発で五合目にテントを張って仲間と仮眠。520分に富士宮口から入山。メンバーはスキー3名とボード2名という構成でした。



今年は4月からの暖かさで、どこの山にも雪がないと聞くけど、それでも富士山は他とは違う別格の山だから、それなりにはあるだろうという想定がわたしの頭の中にはあって、その想定の通り、例年より少なくても雪はやっぱりちゃんとありました。



その雪は6合目を過ぎたあたりから登場し、無理すれば雪の上を登っていけます。わたしは滑走面を調べるために、早々とアイゼン付けて雪の上。他メンバーは7合目手前まで夏道を行きます。



6:00過ぎの富士山の雪は波打った状態のままカチカチに凍ってました。こんな凸凹アイスバーンを自分の力量で滑ることは可能なのだろうか?仲間の力量で全員滑走できるだろうか?とかなり心配になりました。こんな斜面では楽しく滑るなんておこがましい、いかに安全に滑り下りられるのほうが先です。途中、仲間のアイゼンが壊れるというハプニングがあったものの、応急処置でなんとかなり(やはり修理道具は装備に加えておくべきです)、



7合目からは全員で雪の上を歩き、



スキー組の1名が遅れがちとなったので8合目までは頑張ってもらい、8合目でどうするか検討して、登ってきた分は滑りたいとの申し出があったので、8合目の山小屋を風よけにして単独待機してもらうことにして、残り4名で山頂を目指すことになりました。



ここで全員で記念撮影。



8合目を出るとすぐに山頂を視界の奧に捉えることができます。



9合目から風は強くなり、ボーダーのわたしは帆を張って歩いているようなものなので、ときたま煽られるような風もありました。でも富士山の風は突如襲いかかってくるのではなく、ゴーゴーと遠くから地鳴りのような音と共に近づいてくるので、音が鳴ったら歩みを止め身構えることができます。ですので20m程度の風なら危険を感じることなく乗り切れました。



ビックリしたのは結構な頻度で竜巻が起こっていたことです。自分の目の前で竜巻が出来て、押し寄せきたりするから驚きます。富士山の風は本当に特殊です。



9.5合目からはもう一息。山頂の上を雲が綿飴のように蠢き消えていきます。山頂の風が強い証拠です。山頂直下の斜度はいままでわたしは雪壁等も経験してきたので、怖さはまったく感じませんでした。雪が凍結していれば別ですが、時刻はもう正午を回っていたので、アイゼン付けていれば問題なし。



そして山頂に到着!



驚くのは剣が峰からお釜に滑走した後があったこと。山頂まで板担いで登り、お釜に滑り下りる体力のある人がいることに驚きます(お釜へ滑ると登り返さないと下山できない)。わたしは低酸素が災いして、山頂まででもかなりへばりました。久しぶりに板を重く感じました。まだまです。


兎にも角にも、いよいよお目当ての滑走です!富士山をこんなにも早く滑ることができるなんて、ボーダーとしては感無量であります。



がしかし、9.5合目までの斜面は波打つアイスバーンで、滑りを楽しむどころではありません。ここは本当に難しく慎重に滑りました。感無量とか言っている場合ではなく、まだまだ余談は許しません。





にもかかわらず、ゲレンデのように滑る仲間1名。強者です!



9.5合目を過ぎれば、8合目までわたしでも快適な滑走が楽しめました。視界に広がる景色が他の山とは全然違います。





8合目で待機していた仲間と合流して、6合目手前まで滑り降りました。皆楽しそうに滑ってました。でも7合目から下は雪の上に岩が多く、板を傷めないようなルート取りをする必要がありました。これも富士山ならではかもしれません。



520分入山。下山は1610分。想定をはるかにオーバーする10時間50分行動でした。今回はアイゼンの故障、仲間の不調、自分のへばり、雪がつながってない箇所が1箇所あり、ギアを外してのトラバース、様々な要因があいまってかなり時間を労しました。ともあれ無事下山。富士山滑走やってやったぜ!


とまあこんな感じに書いてしまいましたが、富士山はやはり危ない山でした。雪の上を登っていると上のほうから「らぁ~~~く」と大声で何人も長いこと連呼しているんです。上を見上げると、それはもう弾丸ような速度の岩がかなり上のほうから落ちてくるわけです。中には仲間2人の間を突き落ちていった落石なんてのもありました。あれは当たったら大怪我かまたは死にます。ルート取りで様々な工夫を総動員して気をつけねば、雪のある富士山は運否天賦に命を委ねる山登りになってしまいます。危ない山です。


冒頭にも書きましたが、富士山は天気読みが全てです。場合によっては雪面の凍結だけではなく、雪崩の心配もしなければなりません。落石、人の滑落、滑走具の滑落(今回も板を流している人がいました)、そして風。富士山は毎年人の命をのみ込んでいる山です。万全な準備と計画の上でトライしましょう。


そんなわけで、個人的には一発で板担いで山頂取れると思っていなかったので、苦労しましたが成功と言ってもいいかもしれません。自分にはまだまだ鍛えるべきところがあると感じられたし、久しぶりに難しいと感じられる斜面の状態にも出会えた。いい経験になりました。今シーズンはこれにて終了ですが、来季の滑りにいかせればと思います。(おわり)