映画館が大好きな男。Vol.1「邦画らしさ」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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私は映画館が大好きで、年間200前後は映画館に足を運んでいますが、それに比して、映画について書くことがまずないという珍しい男です。昔は批評・感想の類を書きまくっていた時期もあったのだけれど、いまはそういう気持ちがとんと湧かない。でも映画について何か書かなければという思いもある。なぜなら私は映画館が大好きな男だからです。


そんな私が最近は映画館に通う回数を減らす努力をしている。映画に関する趣味を、映画観賞から映画祭出品に移行しようと試みているからだけれど、そんな回数減らしの中で、なにがわたしの映画を選ぶ決め手になるのかというと、やはり私にとって最大の決め手は監督であると断言できます。


今年は既に8本観ましたが、ドキュメンタリー映画をのぞけば、ソフィア・コッポラ、ジェームス・キャメロン、スティーブン・ソダーバーグ、ロマン・ポランスキー、マイケル・チミノ、ロッキーと、映画ファンなら誰もが知っている名前がそこに並ぶ。


せっかく映画館に足を運んでいるわけだし、今年はできたらそういった観点から、なんらかしら不定期に書いてみようかと思い立ったわけです。いつまで続くか分かりませんが、お付き合いのほどを。


本日紹介する作品は、今年9本目にしてようやく邦画チョイスとなった「麦子さんと」。みんな邦画好きだよねえ。でもいま映画館を支えている唯一の客層が、本当の意味で邦画が好きなのかは甚だ疑問ですな。テレビエンタメナイズされたドラマの延長線上の作品ばかりだし、テレビと関係なくても、そこに邦画らしさを見出すのは、なかなかなんだよね。主演もジャニーズばっかりだしね。


じゃあ“邦画らしさ”ってなによ?定義してみろよ!ってつっこまれてしまうかもしれないけれど、まあ考えとくよとしか言えない。考えながら話を進めるよ。今回の監督さんは、吉田恵輔監督。「机のなかみ」「純喫茶磯辺」の頃は、単純に頑張ってね程度にしか思ってなかった監督さんなんだけど、昨年観賞した「ばしゃ馬さんとビッグマウス」で評価一変。


見事に邦画らしさを手中にしておられた。映画に構成のバランスの良さと編集の流麗さも重んじる私としては、今後期待するにたる作品を提供してくれていたと思うよ。そんな期待の中で足を運んだ「麦子さんと」。これが抜群にいいんだ。まさに全編に渡って邦画しておりましたな。


さて、後回しにしておいた邦画の定義だけど、個人的にはこうしようって決めた。「邦画らしさとは、仕事は精緻でありながら裏方に徹し、主題に押しつけがましさがまるでないにも関わらず、普遍的な正しさをもって、見過ごされがちな日常に見事に手を差し伸べている映画」。なんだか長いな。まあ思いついたら改訂します。


ともあれ、本作「麦子さんと」は、見事に邦画していました。タイトルが出るまでの冒頭のシークエンスのつかみ、全体の構成、キャスティング、台詞回し、この主演だとどうかな?と思っていたけど、案外使いこなしていたし、今後大きな仕事も任せられそうな嬉しい仕上がりになっておりました。何度吹かされてしまったことか。ああ悔しい。


おりしも次回作は「銀の匙」を任されているそうじゃないか。同作には全く期待してなかったけど、案外原作より笑わせてくれるかもしれないと、いまから期待値があがりました。まあでも動物扱う映画って難しいんだよね。頑張ってほしいところです。(おわり)