Vol.8『マシューボーンの白鳥の湖』@青山劇場 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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久しぶりに舞台シリーズでも書いてみようか。Vol.4~7はすっとばしてVol.8。今回はなんと初生バレエ体験です。おいらも行き着くところまできたかという感じだが、これもひとえに映画が好きなのだからしようがない。映画が好きだということは、=世の中のすべての事柄に興味を抱かねばならないという呪縛からは逃れられないのである。そして、おいらが敬愛しているワイズマン御大が兎に角昔からバレエが好きでね、ことあるごとにバレエのドキュメンタリーを撮る。そしておいらは御大の撮影するバレエに魅了されてしまうのだなあ。昨年、氏の新作『パリ、オペラ座のすべて』がまた凄いドキュメンタリーでね、氏よまだ進化しますかという按配で(世間的には低評です)、そらあもうバレエ観たいという気持ちはおいらの中で高まりに高まり、ほら見てよ、ぼくを見てよ、ぼくの中のモンスターがこんなに大きくなったんだよ。グチャバキゴクンてなもんなのである。


がしかし、バレエ鑑賞は値がはるもの。市井の者であるおいらには到底手がでない。チケット代だけでおいらの飯代100食分がまかなえる始末である(嘘じゃないよ)。だからバレエは手が届かないものとおいらは諦めた。がしかし忘れたときに吉報が届くとはよく聞く話しで、「マシューボーンの白鳥の湖」の2010年公演が決定。本作はバレエ史上初の4ヶ月公演というロングラン記録を打ち立て、トニー賞の最優秀ミュージカル演出賞、振付賞などに輝いた他、30以上の賞を受賞している有名な公演だが、なんとチケットが安い。理由は簡単で、マシュー・ボーンは鬼才だから、バレエも生演奏でなくて録音で演出してしまうのである。なんたる不遜というか、新しさ!(敷居ひくっ)


おいらは早速チケットをおさえて、初バレエ鑑賞に備えた。しかしマシュー・ボーンとは何故か縁がある。おいらの初舞台観劇も実は「マシュー・ボーン演出振付のシザーハンズ」なのである。別においらが「シザーハンズ」を観劇してマシュー・ボーンのファンになったってわけじゃない。あくまでおいらのチケットの買えるバレエ公演がマシュー・ボーンだっただけのこと。兎にも角にも、おいらを楽しませてくれマシューよ!


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終演。・・・。いやあ、びっくり。初バレエのおいらには、古典中の古典「白鳥の湖」はこれい以上ない相応しい演目であると喜んでいたのだが、こんなもんは「白鳥の湖」でもなんでもなかった。これはあくまで「マシューボーンの白鳥の湖」でしかない。でも、おいらが観劇に行ったのはまさにその「マシューボーンの~」なのだから、文句も言えない。「男性ダンサーが踊る白鳥」として、始めから異端であることはわかっていた。


いやまあでも、マシューボーンは酷いね。圧倒的な個性で、圧巻の個性で、鬼気迫る個性で、原作を完全にリイメージしてしまっている。逆にいえば、相当の才能ということができる。ダンスとストーリーが見事に一体となって、まさに絶望的な方向に向けて走り抜けていくステージ。その悲劇性を高めるために随所に使われているのが、コミカルな笑える演出だが、これらがまたダンスとして昇華され、ポイントポイントで上手く挿入されてくるので質が悪い。言うなれば、これはマシューボーンの世界感の提示なのであって、けしてバレエ公演ではない。一種の舞台劇と解釈したほうが良さそうだ。


がしかし、バレエとして楽しめないのかと言えば、そういうことではない。ダンスシーンはダンスシーンとして見応えがあり、例えば、まさにあの誰でも知っている「白鳥の湖」のあの曲がかかった時の白鳥のダンスなどは、それはもう見事な振付がついていて、面白いし、主役陣のダンスも躍動的で雄大である。


では何故、本公演からおいらはバレエ性を感じ得なかったのか。それは、単においらの主観の問題と言えるのかもしれない。おいらは全ジャンルにおいて言っていることだが、おらはストーリーに興味がない。おいらはもっと主題であったり、プロフェッショナルな仕事だったりにこそ興味がある。その点、マシューボーンの演出は完全にダンスも振付もストーリーを活かすために生み出されたものと言える。一種の天才肌だが、これがおいらとは合わない。おいらはもっとダンサーへの尊敬の念のようなもの、言い換えれば、ダンサーへの信頼感とでも呼ぼうか、でんと構えた演出家、その手のひらの中で自由に踊る一流のダンサー、そういった、まさに奇跡の構図のようなものをバレエに期待していたのだ。この破格のチケット代でそれを望むのは酷だったようだが、如何せん如何せんである。


までも、マシューボーンは偉いよ。こうやって、バレエにしろ、舞台にしろ、未経験者

をこうやって二度も生鑑賞の場まで引っ張り出してきているのは間違いないのだから。台詞がなく、ダンスの振付でのみストーリーを理解させようって企みも好きだし(舞台に台詞なんて入らないと思っている人なので)、なにより、演出もダンスの振付にとどまらず、照明効果やセットとのコンビネーションなど、サブに成りがちな部分を大胆に主役に持ってくる試みなども楽しいし嬉しい。おいらはマシューボーンの作品が肌にあわないのは事実だけど、それも基礎を知らないからこその不満なのかもしれないし(異端の作品を見るならまず王道を鑑賞しておくのが筋だ、本来)、所詮おいらがなにを書いたところで、自分で思うもの、所詮まだまだ意見できるほどの鑑賞眼は自分にはないとね。


兎にも角にも、新しい経験をするのは楽しく刺激となるので止められません。そういう意味ではマシューボーンありがとうと言いたい。までも、次は王道的な「白鳥の湖」のバレエ公演に行きたいなあ。チケット3万とかするんだよね。とても、無理。とほほ・・・


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Vol.1 『マシューボーンのシザーハンズ』@ゆうぽうと簡易保険ホール

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Vol.2 『CHICAGO』@日生劇場

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Vol.3 『オセロー』@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

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Vol.4 『SISTERS』@PARCO劇場

Vol.5 新感線☆RX『五右衛門ロック』@新宿コマ劇場

Vol.6 Dörthe1『ウーマン・オブ・マンハッタン』@演劇フリースペース サブテレニアン

Vol.7 龍昇企画公演『モグラ町1丁目』@theatre iwato