重久は小川の返事を待たずに、再び唇を重ねた。
先程の口付けとは違いねっとりと味わう様な口付けに小川は我に返った。
(な、なんで?なんで…っ!?)
「んん……っ」
重久の腕を振りほどこうにもがっちり抱き竦められ、しかも酒をしたたかに飲んでいるため力が出ない。
息苦しさに口を開けた処にスルッと舌が差し込まれ、キュッと吸われる。
「ん…っ、んん……っ」
小川が顔を背けようとするが顎を掴まれ、更に深くきつく舌を絡ませる重久。
角度を変えながら舌と唇を蹂躙され、小川は頭がボォ…となってくる。
「…っ…ん…、ふ……ぁ…」
飲み込めない唾液が唇の端から零れ落ちる頃、ようやく重久は小川の唇を解放した。
ハァハァと忙しげに肺に酸素を入れる小川を満足気に見下ろしながら微笑む重久。
「やっぱり想像した通りだ…。小川くんの舌と唇は蕩けるように柔らかく、甘いね…」
トロンとした瞳で自分を見つめる小川をそっと押し倒し、重久はシャツのボタンを素早く器用に外していった。
ヒンヤリした外気に肌を晒した時、ようやく自分がどういう状況になっているか理解した小川は、覆い被さってくる重久の身体から逃げようともがいた。
「や…やだ……、や…めて……重さ…は、…んぅぅ…」
重ねられる唇と同じように小川の肌を撫でる重久の手が熱い。
「あ…ぁ…、や…やだ…っ、し…しげさ…ん、やめて……っ」
「大丈夫だよ、小川先生…。僕はアイツらとは違う…。優しくするよ」
その言葉に小川の目が大きく見開かれた。
「な…っ、な……に……」
驚く小川に優しく微笑み、露わになった白い首筋に舌を這わせる。
「や…、い、やだ……っ、重さん…、重さんっ」
目にいっぱい涙を溜めて拒絶する小川に重久は耳元で囁く。
「君が神経衰弱で大学院を止めたなんて嘘…、知ってるから…」
「え……」
「……研究員仲間に……、無理矢理強姦された事……知ってるんだ…」
「な…っ、なっ…な…んで……っ」
「だから逃げるように、こっちに来た……」
重久の口から思い出したくない過去が語られ、ショックで小川は身動きが取れなくなった。
「僕の知り合いがそこの研究員にいてね。君の事を知りたくて吐かせたんだ…無理矢理だけどね」
「あ…、俺……、俺…っ」
小川の大きな瞳から涙がポロポロと零れ落ちた。
重久は震える小川の細い肢体をそっと抱き締めた。
続く