「清盛……」
濡れた瞳が清盛を捉える。
その瞳を見ただけで清盛自身の欲望がムクリを頭を擡げる。
(本当に東国で何も無かったのか、義朝…。そなた自分では解っておらぬのか、自身から漏れ出る色香を……)
じっと自分を見詰める清盛の視線に義朝の身体が熱くなってくる。
ワザと視線を逸らし、何事も無かったように義朝が清盛に告げる。
「俺は今日正妻を娶った」
「……え……!?」
「熱田神宮大宮司、藤原季範様の娘だ。名を由良という」
「熱田神宮大宮司の娘とは、高貴な…」
清盛は目をパチパチさせ、驚きを隠せない。
「……お前の為だ……」
ぼそりと義朝が呟く。
「え?」
「…何でも無い!源氏再興の為、朝廷との繋がりは必要だからな。由良は鳥羽上皇様の第二皇女・統子様に仕えておる」
「そうか……」
「源氏再興と……、お前と武士の世を創る為だ…!」
はっ、と清盛は顔を上げた。
「お、俺もだ…!俺もそなたと武士の世を創る為、今日後添えを貰うた。家をしっかり護る者が居らねば戦えぬゆえな」
「そうか…。思いは同じか…」
義朝は清盛にフッと笑いかけた。
その微笑みが何故が儚く見え、思わず清盛は義朝を抱き締めた。
「そなたと二人で武士の世を創ったら……、俺と一緒に宋の国に行かぬか…?」
「宋…?」
「ああ、この国には無いモノが沢山ある!そなたと二人ならきっと面白いに違いない!」
「そうだな…」
「約束だぞ」
「ああ…」
どちらからともなく、唇を重ね合う二人。
愛し合う二人の身に起こるこれからの運命を、夜空に輝く月だけが知っていた。
続く