今回は私の彫り方について、どんなことに注意しながら彫っているかを書いてみようと思います。いつもの如く、以下の内容は、「私はこうしています」というものであり、この方法を推奨したいということではありません。一通り読んでみて、これは良いと思うことがあれば模倣していただければという気持ちです。

 

最初に要点を書くと

1.筆順の通りに彫る必要は無い。字を書くのとは違うので、彫りやすい順番に彫っていけば良い(筆順の通り彫らないことが良いことも多い)

2.自分なりに線を区分けして、一か所ずつ仕上げていく。例えば、縦画で最後をハネている場合は、「最初に点(起筆=筆の入り)を彫り」→「縦の直線部分を彫り」→「最後にハネ」の部分を彫る

3.焦らずゆっくりと彫る。特に硬さにムラがある木地は、硬い部分と柔らかい部分の境で刃が思わぬ方向に持って行かれることがあるので注意する

といったところでしょうか

 

それでは、具体例として「飛」を彫ったときの画像を掲げます。画像を参照しながら続きを読んでいただければと思います。

①画像では最初に横画から彫っていますが、転折(折り返し部分)から浮鵞線(縦画からカーブして最後をハネる部分)を先に彫っても構いません。私の場合は

イ.横画を転折の部分まで

ロ.浮鵞線のハネの手前まで

ハ.最後に上ハネ

という順に分けて彫っています。線を三つのパーツに分けて、一つずつ仕上げていく方法です

 

②横線が彫れたら、続けて浮鵞線と右肩の点二つです。最初の点ははね出しがありますが、画像のようにその部分は後回しにして、最後にはね出しの部分を彫ります。

カーブしている部分は、右手で刃を固定し、左親指で圧をかけながら彫り台を回転させています。

 

③中央の縦画ですが、この字母では縦画の最後を左側が少し膨らむ形にしています。膨らんだ部分は後から刃を入れることにして、まず、谷線がしっかり出るように縦画を彫り、それができてから膨らんだ部分を彫り取ります。まず、谷線(薬研の底)をしっかり決めることが大切という考えからです。

 

④カーブしている部分は、自分の場合、一度に彫り取れるような技術は無いので、字母線の外側にミスしないように少しずつ彫るようにしています。刃を進めるときは、視線は字母線の縁にほぼ集中。予め、切っ先が字母線の中心を通るよう、且つ刃を入れる角度が50~60度になるよう見当をつけて刃を刺し込みます。字母線の中心に切っ先が届いたら、左親指で圧をかけながら彫り台を回転させます。これを繰り返して、最後に段差がついてしまった箇所があれば削り取ります

 

印刀を進めるときはゆっくりと。特に縦画を彫るときは、木の繊維に負けたり、硬さの違う部分の境目で刃を持って行かれそうになることがあるので、字母線の外に刃がいかないよう注意しています。

収筆(止め)の部分は、いったん刃を抜いて70~80度くらいに刃を立てて差し込み直します。ついで右手で刃を固定して、彫り台をぐるーっと回転させます。急カーブを過ぎたら刃を刺し込み直し、最初に刃を入れた部分まで彫り進め、そこに刃を寄せるようにして切り離します。

 

以上、自分の彫りについての確認・点検でした。こんなふうに頭の中を整理しながら要点を書き出していく過程で、やり方を見直してみようと思うことがあります。

つまり自分の為というのが一番の目的なのですが、これを読んで駒作りに興味を持ってくださる方が出てきたり、初心者の方の役に立つことがあれば良いなあと思っています。

 

最後に、彫りの画像を掲げます。相変わらずのスローペースで情けないですが、今日もブログを書いているうちに、モニタの字が霞んで来ているのでギブアップです。なるべく早く仕上げたいです。