「私の駒作り」の中でも書いていますが、改めて駒木地を購入したときの不良チェックについて書きます。

最初にお断りしておきますが、この投稿は木地師を非難しようとするものではありません。人間のすること、なかでも手作業でする仕事に「見落とし」は付きものです。ですので、買う側もそれを前提に受入れ検査はきちんとするべきであるという考えからの投稿です。

 

検品の必要性は、その駒木地が一本の原木から組まれている場合は特に高くなります。不良が見つかった場合、急いで木地師に伝えて代替品をもらわないと、駒が完成したとき一枚だけ色味が違うということになりかねません。

木地の不良は、慣れないと分かりにくいものもありますので、いくつか画像を掲げその説明をします。

 

 

①判りやすい黒点(シミ)です。私の知識の範囲では線虫かカビによるものです。内部まで続いており、研磨しても消えません。

②黒い線状のシミ(①と原因は同じ)

③上の木地の駒尻を撮ったものです。小さな黒点がありますが②の黒線と繋がっていると思われます。つまり、木地を研磨したとき②の黒い線は長く濃くなる可能性があります。

見方を変えると、駒尻や天に黒点がある場合は、研磨すると①や②のような不良が出てくる可能性があるということです。

④拡大しているので判りやすいと思いますがヒビがあります。ヒビの周囲が白っぽく木目も無いことに注目してください

⑤天の部分を撮ったものですが、一部だけ白くなっている部分があります

⑥これも矢印の先に周囲と違う組織になっている部分があります

 

要約すると、「駒尻や天に黒点がある木地は研磨でシミが出てくる可能性がある。また、一部が違う組織になっている木地はそこにヒビが出やすい」ということになります。

ヒビが出る原因は推測でしかありませんが、以下のようなことだろうと私は考えています。

 

1.黄楊が生長(←植物の場合は”成長”ではなくこちらだそうです。駒作りを始めるまで知りませんでした<汗>)するとき内部に歪みができ組織が裂けることがある。そして、そこを塞ぐために周囲と性質の異なる細胞が増殖する(上の画像の白い部分)

2.白い部分の組織は、元からあった組織より柔らかい

3.原木を乾燥させるとき白い部分は収縮率が高く、このため周囲の組織に引っ張られる力が働き裂けてしまう。

 

私は、孔雀(稲妻、向日葵)杢を彫ったことはまだありませんが、仕上げ磨きの段階でヒビが出てくることの多い木地だと聞きました。恐らく、上記のように性質が違う組織が混在していることが原因だと思います。

その他、乾燥不足のまま成形したため木地に歪みがある。整形ミスで大きさが他の木地と異なっているなどの例もありました。

 

駒木地を購入したときは、すぐに

・裏表だけではなく七つの面すべてを目視してシミなどがないか確認する

・同じ大きさの木地同士を合わせて隙間が出ないこと、厚みや大きさに差が無いことを確認する

という検査をするべきだと思います。

 

私が駒木地を買い出してから5年ほど経ち、今、手持の木地は40組以上あります(買い過ぎですね<苦笑>)が、何かしらの不良があって代わりの木地をもらったことが4回あります。

決して少ないとは言えない割合だと思います。

 

代替品を依頼するとき、私は木地の状態の説明と併せて画像を添付してメールを送るようにしています。不良の認識が木地師さんと違う場合もありますので、不良の程度によっては有償で構わない旨も伝えます。

ちなみにすべて違う木地師さんでしたが、どの方もすぐに良品を送ってくださり、代金を請求されたことはありません。良心的な方が多いと感じています。