
真夏の満員バスほど体が絶叫するものはない。
そして、
苦しみ喘ぐ乗客達は、
日頃の行いから宿業(しゅくごう。前世での行いのこと)にまで思考が飛ぶ。
そんな満員バスに乗り合わせたかんちゃんは、
エアコンさえ利かない中に苦しんだ。
しかも、
ダベりあっている女子高生グループのすぐそばには空席がある。
座ればエエもんを女子高生グループは座らない。
そしてその席に座りたがる者も、
まさか、
女子高生グループをかき分けて座ることには抵抗がある。
かんちゃんは、
考えに考えた挙げ句、
女子高生グループに近づいた。
そして体をクネクネさせて猫撫で声で、
「ねえ~ン。お嬢たち。その席に座らせてちょうだいな?」と言った。
女子高生グループはキモがって、
空席から身を遠ざけた。
かんちゃんは見事に、
空席をGETした。
が、
しばらくすると、
女子高生グループから、
聞こえよがしに、
「釜」「釜」「お釜」と囁かれた。
かんちゃんは心に、
「ナニを言われても席を手に入れたんやからエエんや」と自己弁護した。