あるジジイがいた。
ジジイの夢は、マイホーム持つことやった。
昔は、ささやかながらも持っていた。
が、
一人息子に先立たれて、
挙げ句に、
息子の嫁に家取られた。
でも、ジジイは前向きに生きた。
後ろを振り向いても、徳にならんことを、
長い人生経験で会得した。

ジジイは死にものぐるいで働いた。
マイホーム🏠の為に。
そして、
大格安の前から目を付けていた、
山の上の小さな一軒家を買った。
このマイホーム購入の資金やけど、
昔っから、
嫁を信用していなかったジジイの隠し貯金が主であったことは言うまでもない。
足らないところは、
老体酷使した過剰労働が助けた。

色々な物が運ばれた。
その中で真新しい蛍光灯の箱を開けた。
かつて、
電気屋さんしてたジジイは、
昔取った杵柄とばかりに、
蛍光灯だけ、
自分で取り付けた。

山の上とは言っても、
近頃の猛暑はひるまない。
熱中症にかからない為にも、エアコン着けんとイケんのに、
ジジイは大のエアコン嫌い。
やから、
大きく窓開けて、
気持ち良い山の風を入れた。
が、
風は段々強くなり、
室内の物が飛び回る程やった。
やけど、
ジジイは、上機嫌。
山の風も、室内に入れば俺の風。
ジジイは気持ち良く「よさこい音頭」を唄った🎤
その時、
物凄い風が吹き付けたので、
蛍光灯が大きく揺れて、
真下のジジイの頭に落下した。
ジジイは、死んだ。

人は、このジジイのことを、
蛍光灯直撃ジジイと言って、
憐憫の思いで、手を合わせるらしい。
そして、
ケイジロウ。
世の中、
ワイルドな話に満ち満ちている。
でも、
この、
蛍光灯直撃ジジイの話程、
ワイルドな話を俺は知らない。