(ドア)(ガチャ・・・)

妻「うわぁ~、ステキな部屋~。見て見て、やっぱり海の色が日本とは全然違うわぁ~。新婚旅行思い切って南の島にしてよかったわぁ~、ねぇあなた」

夫「ん?あぁ、そ、そうだね・・・」

妻「ヤダ、どうしたの?気分でも悪いの?」

夫「いゃぁ、さっきチェックインの時さぁ、気が付かなかった?」

妻「何を?」

夫「フロントにいた男がさぁ、俺の顔見ながらなんだか・・・ニコニコ、ニコニコしてんだよな」

妻「ふぅ、当たり前でしょ。客商売なんだから・・・。ガイドブックにもあったでしょ?この島の住民は信仰深くて、とってもフレンドリーな人々だって」

夫「ん、そういうのともちょっと違うんだよ・・・。従業員が集まってきてさ、そいつらみんな俺の顔見てニコニコ、ニコニコしてんだよ」

妻「あれって、お客様を歓迎する儀式だと思ってた、私。よく日本の旅館でもあるじゃない?」

(ノック)(コンコン・・・)

妻「あれっ、誰かしら・・・」

夫「あぁ、俺、出るよ」

(ドア)(ガチャッ・・・)

妻「・・・どうしたのよ、そのフルーツ・・・」

夫「それが訳分かんないんだよ。ニコニコ、ニコニコしながらこれ押し付けるんだよ・・・。島の言葉は分かんないし・・・」

妻「サービスにしてはすんごいフルーツねぇ~」

(ノック)(コンコン・・・)

夫「っ、今度はなんだよ・・・」

(ドア)(ガチャッ・・・)

妻「やだ、どうしたのその魚!?まだ生きてるじゃない・・・」

夫「またニコニコ攻撃だよ。なんだか漁師みたいなオッサンがさぁ、ニコニコしながらこの魚、俺に押し付けるんだ」

妻「そんなに日本人が珍しいのかしら・・・」

夫「でも気味が悪いよ」

妻「・・・ねぇ、もしかして、これじゃない?」

夫「何が?」

妻「こっちの、壁に掛けてある肖像画見てよ!あなたそっくり・・・」

夫「ホントだ・・・俺の顔だ・・・」

妻「この人って、もしかしたら島の偉い人なんじゃない、王様とか。ん~、島に伝わる神様とか?」

夫「神様??じゃあ、あれかい?あれ・・・お供え!?」

ヒヤマカズヒト作「島の神様(前編)」

出演 入江崇史・雨蘭咲木子