東出昌大主演の

「Winny」という映画を観た。

 

東出昌大と聞くと、

どうしても数年前の一連のスキャンダル報道を

思い出さずにはいられない。

当時、アンジャッシュの渡部の報道と

同時期に話題になっており

女性同士で

「渡部みたいなことをした夫と東出みたいなことをした夫と

どちらなら許せるか?」なんて

下世話な話もしたりした。(もちろんどちらも無理だが・・)

話が横ににそれてしまった。

 

映画の話にもどそう。

この映画は

そんなあの報道を忘れてしまうほど

東出昌大が好演していて

東出昌大の演技を通して

主人公の金子勇氏の人となりを垣間見ることができ

会ったこともない金子氏のことが好きになってしまうのだ。

金子氏は

「Winny」という情報共有ソフトを開発した超優秀な

エンジニアだったのだが

それを悪用する人が多発したために

逮捕され、有罪判決をうけてしまう。

映画の中に

「ナイフで殺人が起こったとしてナイフを作った人に罪はあるか?」

というたとえがあったが

まさに的確なたとえであり

純粋に役に立つものを作りたかっただけの人が

正しく扱えない人間が存在したために

世界に羽ばたくはずの羽根をもがれて

犠牲になってしまったという悲話だ。

最終的には無罪となったのだが

この事件のために

金子氏は七年間も

開発作業を余儀なくストップさせられ

親しい友人やたったひとりの姉とも連絡がとれなくなった。

そして、金子氏と同じく開発に携わる人たちにもショックを与え

この事件がきっかけで

日本のIT事業が海外に比べて大幅に遅れてしまったともいわれている。

そして、急性心筋梗塞で43歳の若さで急逝。

これが、裁判によるストレスが一因だったとしたら

あまりにもおそろしいし、残酷な話だ。

 

東出演じる金子氏は

どこか浮世離れしていて本当に邪心のかけらもなく

ほんのり社会的不適合な危なっかしい匂いも感じさせるところが

不思議な魅力を醸し出している。

東出はこの役柄のために体重を18キロも増量させて挑んだ。

体重は減らすより増やす方が何倍も苦しいらしい。

 

映画の中でもうひとつ印象的だったのは

「出る杭は打たれるというが杭は一人では打てない。

杭が動かないように押さえる人間、杭をたたく人間、たたくことを命令する人間がいる」

とう言葉だ。

いやな話だが、

それは、私たちの身近にある学校だったり組織だったり小さなコミュニティだったりでも

存在する構図だ。

叩くときは複数でいっせいにたたくから

人は、たたかれることを恐れて萎縮する。

萎縮して出る杭になることをやめた人間が

「空気の読める人」として評価される。

出る杭が出すぎて打たれなくなったら

また一斉にその人を持ち上げる。

そんなふうに弱者と強者が入れ替わり

入り乱れて

この社会がつくられていくのだとしたら悲しい。

そんな中で金子氏を最後まで

支援し続けた人たちとの絆は

この映画の唯一の救いになっている。

 

金子氏のご冥福を祈るとともに

同じような犠牲者が今後あらわれないようにと

思わずにはいられない。