Eテレ「趣味どきっ!」源氏物語の女君たちの

第3回目は「葵上」だった。

光源氏は12歳で葵上と政略結婚している。

葵上は、左大臣家の娘で

源氏より5つ年上。

容姿も家柄も申し分ない女性なのに

源氏は心惹かれない。

お互いの第一印象を

番組では丁寧に解説してくれていた。

源氏は葵上を見て

藤壺と似てないし(←いつもこれが基準)しっくりこないな。

という印象を持つ。

一方、葵上の源氏に対する印象は

美しすぎて気おくれし、自分が年上だから気恥ずかしく感じる。

といったものらしい。

この「恥ずかしい」という感情を素直に出せれば

良かったのかもしれないが

この人の場合、それが相手から見ると

つんけんしている冷たい女という印象となる。

源氏の新しい女性とのうわさが

聞こえてくると心穏やかではいられないはずだが

プライドなのか性格なのか

それを、とがめることも

すねて甘えることもできない。

こんがらかった糸をひっぱると

よけいに硬くがんじがらめになる糸のもつれ。

こうして、こじらせた者同士が

10年という歳月を過ごし

やっと子供が授かる。

産前と産後、少しやつれて弱っている妻を

見て、はじめて美しいと感じる。

番組内で

おぎやはぎの

矢作さんも言っていたが

人間は隙がないといけないものらしい。

隙だらけでもいけないのだろうけど。

 

葵上が生霊に呪われて死ぬ少し前、

葵上は初めて

「ちょっと出かけてくる」と言って出ていく源氏に対し

素直なしぐさを見せる。

そのときの原文が

「いときよげにうち装束きていでたまふを常よりは見出して臥したまへり」

(きれいに身なりを整えていくその後姿をいつも以上に目をとどめて見送りながら臥せっていらっしゃる)

葵上の心情もセリフも何も書かれていないのに

この「視線」の様子だけが書かれているらしい。

あとで考えるとこれが彼女の「死亡フラグ」のようで

とてもせつない。

この時代の読者も

この一文のみで

葵上の気持ちを想像したのかもしれない。