Eテレの「趣味どきっ~源氏物語の女君たち」の

2回めは

紫の上だった。

紫の上は、藤壺の血縁であり

最初に登場した時は、

10歳くらいだった。

「犬君(いぬき)が雀の子を逃がしてしまったの」と

あどけなく泣いている少女。

私は最初この犬君の意味が全くわからなかったのだが

どうもお付きの遊び相手の子どもで友だちみたいなものらしい。

無邪気に雀や友だちと遊んでいた少女が

源氏に

「藤壺に似ている」という理由だけで

今の感覚でいうと誘拐(?)され

兄のような存在と信じていた源氏に

性加害(?)を受けて、妻となり

紆余曲折ある数奇な運命に巻き込まれていくとは

本人も読者も予想だにしなかったろう。

晩年、紫の上は幼いころの自分に思いを馳せている。

悩みもなかった幸せだったあの頃の自分。

雀をかごに入れて遊んでいた幼いころの紫の上。

しかし、いつのまにか誰かの身代わりとして

自分が、かごの中の鳥のような存在となってしまう。

一度かごの中に入ってしまった鳥は

外では羽ばたけない。

幸せのようで

幸せではない生活。

愛されているようで

愛されてないような生活。

それでも、

そのかごの中で

累積していくストレスにさらされながら

懸命に憂悶の日々を生きている晩年の紫の上は

皮肉なことに

受け身だった若いころの紫の上よりも

はるかに魅力的なのだ。

読者というのはなぜ

幸せなヒロインより

不幸なヒロインの方に心惹かれてしまうのだろうか。

それとも

紫の上にとって

不幸も

幸せの一部だったのだろうか。