今村夏子さんの

「チズさん」を読んでみた。

とても短い話だ。

 

主人公は「チズさん」という老人と

親しいらしい。

親しいといっても

ちゃんと意思の疎通ができているかどうかは曖昧だ。

でも、何らかの理由で

主人公は

チズさんと過ごす時間を

心のよりどころにしているようだ。

 

ところが

ある日、チズさんの本当の家族が

家に訪ねてくる。

 

主人公は、家族に悟られないように

チズさんを連れ出そうとする。

でも結局実行には移せなかったように読み取れる。

 

なぜ連れ出そうとしたのか。

自分がチズさんに必要とされていると感じたのか

それとも主人公がチズさんを必要としたのか。

 

よくわからない。

必要とされたいという気持ちはややこしい。

必要としている気持ちはややこしい。

それは

好意や善意と混同しやすいように感じる。

 

主人公の行動は

善意からだったのか

それとも

自分の寂しさや空虚さを

うめるための

行為だったのか。

 

そして、それらの

行為をチズさん自身は

どう感じていたのか。

何もわからないまま

物語は終わる。

そのもやもや感が

気持ち悪い。

本当のところは

だれにも

わからない

でも、それが

逆にリアルなのかもしれない。

 

完全な「善意」も完全な「悪意」も

実態としては

よくわからないものかもしれない。