●製品名  :タイガーパウ Cyber Zero(サイバーゼロ)

●メーカー :アシックス

●定価   :\25,000

●キーワード:「履くな。これは装着するスパイクだ。」、伊東浩司、新井初佳、パワーロス・ゼロ理論

 

1996年の日本選手権、200m予選で伊東浩司選手が後半流しまくったのに20"29の日本新記録(当時)を出しました。その時に履いていたスパイクは、メーカーロゴが入っていない、見慣れない未発売の一足でした。伊東選手のスパイク履歴上、アシックスであることは間違いないと思いましたが、そのスパイクこそがCyber Zeroです。

 

アシックスがリロイ・バレル等との共同研究の中で目指していた「パワーロス・ゼロ」を体現するため、設置時に生じるクツと足のすべりも抑えるべく、構造を紐からマジックテープに大胆に変えた一足です。

 

今では、マジックテープのフィッティングを採用しているスパイクは珍しくないどころか、「紐の方がフィット感が良い」等と逆のイメージで捉えられておりますが、

このスパイクのフィット感は最高でした。確かに履くと言うより装着すると言う表現に近く、素足のような感覚で、カーブがとても走りやすかったです。プレートがフラット構造なのも、素足感覚を強めていたのかも知れません。ただ、当時のアシックスのショートスプリント向けスパイク同様、反発はあまりなかったです。パワーを持ちながら水平方向に力を加える伊東選手のようなタイプの選手に最適なスパイクでした。(バネで走る私には使いこなせませんでした。)

余談ですが、試合前にトイレに行きたくなっても、さっと脱げて履ける、そんな利便性もありがたかったですね。

 

なお、2000年からは同じ“Cyber Zero”の名前を冠した2代目が発売されましたが、こちらは現在も“Cyber Blade”に採用されているマジックテープの構造となっております。なんか、「履きにくく、フィット感も落ちた」と感じさせられたものでした。

 

このスパイクをその後引退まで履き続けた伊東浩司選手は、100m~200mの日本記録を塗り替え、特に1998年にアジア大会で出した10"00のパフォーマンスは鮮烈に記憶に残っております。そのためか、このスパイク自身も「伝説のスパイク」「アシックスの最高傑作」等とも呼ばれ、現在のフリマサイトでも検索性を高めるためにしょっちゅう使われるキーワードとなっております。


↓陸マガ 1997年1月号くらいに掲載の広告です。赤×シルバーの1stカラーはアッパーの素材も柔らかく一番完成度が高かった気がします。

↓1998年度2ndカラーです。伊東浩司選手は、黄色×ソールがすべてシルバーのカラーをよく着用しておりました。

↓1999年の3rdカラーは、新井初佳選手の印象が強いです!

 

この頃のミズノ、アシックスの開発競争は面白かったなあ!また日本のスパイクが世界を牽引する日がくることを願っています。