カール・ルイス!

私のような40代以上の世代は必ず聞いたことのある伝説のアスリートですね。

そんな彼がキャリア後半に差し掛かる1991年、東京で開かれた第三回世界陸上で

装着し100mで9"86の世界記録を樹立した時のスパイクに、

先日お目にかかる機会がありました。

 

とある伝統的な陸上競技グッズ専門店さんに、以前より飾られているのは

知っていたのですがスタッフさんにお願いし撮影させていただきました。

 

 

1991年の世界陸上直前、米国/サンタモニカ・トラック・クラブの同僚で

25歳のリロイ・バレルが9"90の世界記録を樹立。

世界陸上開催時は31歳を迎えるルイスはそろそろ限界が来ていると

多くの人が思っていました。

丁度そのころ、バブル経済だった日本は、なんと

ミズノがカール・ルイスと、

アシックスがリロイ・バレルと契約を結ぶことに成功。

世界陸上の100mは、ミズノvsアシックスの代理戦争と場外では

ささやかれておりました。

 

ルイスのミズノへのリクエストはとにかく軽いスパイクを!とのことで、

このスパイクは軽量化するための工夫が随所に凝らされております。

なんといってもピンが耐久性度外視の硬化プラスチックとなっており、

当時のスパイクとしては

超軽量(29cmで片足115g)を実現しております。

何でも、事前のスパイクチェックで、ソールの一部突起が「スパイクピン」と

みなされミズノ関係者が突起をカッターで削ったとの逸話が以前、

TV番組で語られておりました。

(ルール上、スパイクピンは11本までしか配置できません)

ルイスには、「軽量化のためだ!」と語っていたらしいですが、

ミズノ関係者は肝を冷やしたことでしょう。。

(掲載画像上のどこを削ったのかはわかりません。。)

 

かくして無事にレースに投入できたこのスパイクで、

前述の通りルイスは9"86の世界記録を樹立!

30代を超えて世界記録を樹立したルイスに世界中が感動しました。

 

当時としては珍しいフルレングスプレートが採用されていて、

場所によってピンの形状が違う(4種類の形状)等

技術の粋が詰め込まれている一足で、このスパイクを見られる、

かつ撮影できるのはマニアにとっては幸せでした!

 

なお、このスパイクを再現した、埋め込み式の硬化プラスチックピンのモデルが

1992年、1993年に市場で発売されておりました。

(『スーパーアスリート BO-S』『スーパーアスリート WR』、

 1994年にも色違いで発売)

 

しかし耐久性は今のインクス等に搭載されている固定ピンとは違い全くなく、

すぐに丸くなってしまっているのを見かけたものです。。

中学生くらいの選手が練習中、このスパイクで芝生の上など歩いているのを見ると

ヒヤヒヤしたものでした。

現代の高速・硬化トラックでは刃が立たず?、耐久性が問題で

発売できないでしょうね。

 

ちなみにバレルもルイスに後塵を拝しながら、9"88でそれまでの

自身の世界記録を上回るパフォーマンスでした。

また、1995年にはアシックスのスパイクで9"85の世界記録を出しており、

1990年中盤までは、日本発のスパイクが世界の陸上短距離界をリードしていた

時代と言えます。

 

今後、日本のスパイクがまた世界記録を出せるよう、祈っております!