片野です。よろしくお願いします。今回はタイトルにある通り、「居酒屋談義で社会的共通資本を語れるようになる」ことを目的として、宇沢弘文著「社会的共通資本」に書かれた内容を整理しようと思います。
社会科学、特に経済学を趣味で勉強するというのは、とても孤独な営みだと思います。勉強したところで稼ぎがよくなるわけでもないし。僕は趣味に打ち込むときは、同じ趣味を持つ仲間と語ったり、一緒に活動することが最上の目的だったりするのですが、経済学について他人と楽しく語る機会はほとんど皆無な気がします。ネットで自分の思想を押し通すための理論武装として勉強している人とでは、喧嘩か傷のなめ合いで終わることがほとんどです。大学に行くのが一番だとは思うのですが、そんな金ありません。
でも最近、酒が一滴も飲めない癖に酒場に繰り出すことが増えたんですが、なかなかどうして学問について平和に話し合える場なんじゃないかな、と気づきました。僕が行く場所がたまたまそうなのかわからないのですが、みなさん上手に酔われる大人ばかりなんです。
ということで、今後居酒屋で経済学、特に宇沢弘文について話す機会があった時に、「社会的共通資本のひとですよね、岩波新書を持ってます。かなり前に読んだのですが、どんなことが書いてあったか覚えてないです、、、」とならないために、この記事に要点を整理しようと思います。
■はしがき
制度主義:資本主義と社会主義を超えて、すべての人々の人間的尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に享受できるような経済体制を実現しようとするもの。ヴェブレンが19世紀末に提唱した。
社会的共通資本:
・一つの国ないし特定の地域に住む人々が、豊かな経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置。制度主義の考え方を具体的な形で表現したもの。
・それぞれの国ないし地域の自然的、歴史的、文化的、社会的、経済的、技術諸要因に依存して、政治的なプロセスを経て決められるもの。
・分権的市場経済制度が円滑に機能し、実質的所得分配が安定的となるような制度諸条件。
・社会的共通資本は決して国家の統治機構の一部として官僚的に管理されたり、また利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されてはならない。社会的共通資本の各部門は、職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規範にしたがって管理・維持されなければならない。
社会定期共通資本=自然環境+社会的インフラストラクチャー+制度資本
自然環境:大気、水、森林、河川、湖沼、
社会的インフラストラクチャー:道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなど
制度資本:教育、医療、司法、金融制度など
■序章 ゆたかな社会とは
ゆたかな社会:すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを十分に生かし、それぞれの持っている夢とアスピレーションが最大限に実現できるような仕事にたずさわり、その私的、社会的貢献にふさわしい所得を得て、幸福で、安定的な過程を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会である。
ゆたかな社会において満たさなければいけない基本的諸条件:
⑴美しい、ゆたかな自然環境が安定的、持続的に維持されている。
⑵快適で、清潔な生活を営むことができるような住居と生活的、文化的環境が用意されている。
⑶すべての子どもたちが、それぞれの持っている多様な資質と能力をできるだけ伸ばし、発展させ、調和のとれた社会的人間として成長しうる学校教育制度が用意されている。
⑷疾病、傷害にさいして、そのときどきにおける最高水準の医療サービスを受けることができる。
⑸さまざまな希少資源が、以上の目的を達成するためにもっとも効率的、かつ衡平に配分されるような経済的、社会的制度が整備されている。
■疑問
社会的共通資本:たとえ私有ないしは私的管理が認められているような希少資源から構成されていたとしても、社会全体にとって共通の財産として、社会的な基準に従って管理・運営される。
⇒「私有ないしは私的管理が認められているような希少資源」の具体例は?