誤解1: 日米間の二国間貿易はバランスしなければならない。あるいはある程度バランスしなければならない。
A: 1960年代前半に、日本はアメリカに対して二国間収支を均衡させるように何回か要請した。その際のアメリカの回答は、以下のとおりである。
「貿易収支は多角的にみるべきもので二国間の不均衡は問題にならない。日本の対全世界の経常収支の赤字が問題であれば、日本政府自身がその改善に努力すべきものである」
これは、日米に限らず、世界共通の認識である。現在の世界貿易体制は、GATT・IMF体制と呼ばれ、GATT(関税と貿易に関する一般協定)とIMF(国際通貨基金)協定という二つの国際協定に基づくグローバルな多角的自由貿易・協定の体制である。
ここでいう「多角的」というのは、「二国間のバランスを問題にせずに、様々な国と多方向に取引する」ということである。また「自由」というのは、人為的な品目別の制限をせずにできるだけ自由に貿易・決済をするということである。
二国間で貿易をバランスさせる「双務主義」とか、品目別に多少ともバランスを取ろうというような「管理貿易」は、多角的自由貿易を窒息させる旧ソ連・東欧諸国の「コメコン方式」への道であり、それが経済的破滅に至ることは、社会主義陣営の経済体制の崩壊によって歴史が証明したところである。