先月27日、史上最多の1047勝を挙げて昨年の名古屋場所で引退した元大関・魁皇(39)の断髪式が行われたのだが、そこで異例の報道陣に対する“締め出し”があったという。
断髪式の際、力士は土俵のうえで親方に大銀杏を切り落とされた後、控室である審判部の部屋で理容師に髪型を整えてもらいながら取材を受けることが通例となっている。ベテラン相撲記者が語る。
「そこで髷のない普通のヘアスタイルになっていく様子を見守りながら感想を聞いたり、親方としての決意を聞いたりするんです。そこで取材させて貰わないと、時間がない。そのあと、改めて土俵に上がって挨拶するだけでなく、断髪式のチケットを売ってくれたお茶屋さんに一軒一軒挨拶回りしたり、場所を移してパーティがあったり、断髪式の日は忙しいですからね」
しかし魁皇は「あとで対応するので」と、審判部の部屋に報道陣を入れなかったのだ。
これには記者たちが色めきたった。
「魁皇はマンチェスターUのルーニーのように植毛こそしていませんが、以前から髪が薄いことを『気にしている』と口にしていました。ずっと高級な育毛剤も使っていましたし、この隙に何か“細工”でもするのかと想像をかきたてられました」(別の相撲記者)
しばらくすると見事なオールバックの髪型になった魁皇が部屋から出てきた。報道陣に与えられた取材時間はわずか3分。そんな慌ただしいなかでも強者がいて、魁皇に「クルッと回ってみて下さい」とリクエストしたという。
「魁皇は嫌がらずに回ってました。その様子を見て報道陣から『大丈夫だ』とか声が漏れた(笑)。異例なことをするから皆、同じ心配をしてたんでしょう。正直、もっと少ないかと思ってたけど髪の量は意外とあって、本人が気にするほどでもなかったですね」(前出・ベテラン相撲記者)
一方、こんな声も上がった。
「私には“盛って”いるように思えました(笑)。まあ、実際のところは、髷がなくなるとどういう状況になるのか、不安だったんでしょうが、これから若い人を育てていく人間が、髪を気にしてコソコソしてちゃダメでしょう」(前出・相撲記者)
育毛より育成に精を出して欲しいものだ。
(週刊文春2012年6月14日 初夏の特大号「THIS WEEK スポーツ」より)
「この記事の著作権は週刊文春 に帰属します。」