木曜日の夜、『トコ』がご飯を食べなかった。
猫は気まぐれだし、気に入らないと食べないのはいつものことなので
特に気にしていなかった。
金曜日、やっぱり食べない。
土曜日、がくっと全身の肉が落ちる。水ばかり飲む。
無理やり食べさせるものの、嫌がる。
でもトイレには自分で行くが、夜になるにつれ失敗するように。
20歳を越えているから、いよいよ介護かな、
できるだけ今までと変えないように、でも『トコ』が使いやすいように
ご飯やトイレの場所を変えようと思っていた。
日曜日、起きたらトイレ失敗のあと。
お気に入りのクッションの上でぐったりとしている『トコ』は
すでに尋常ではなかった。
毎日「うな~んうな~ん」と大声で鳴くくせに、
力なく「うにゃ」というだけ。
なでてやるとしなやかさは全くなく、骨の一つ一つがわかる。
お気に入りのクッションから、よたよたと降りてきたものの
畳の上でぜいぜいと寝ている姿は、あまりにも痛そうだと
クッションの上にもどしてやるとやっぱり出てくる。
どうやらまぶしいらしい。
よくみると、瞳孔が開いている。
外にでない子だから、毛がつやつやなのはいつもと同じだけど、
やわらかさが全然違う。
『その日』が来ているのが嫌でも分かってしまう。
坂道を転げ落ちる様というけれど、心情的には崖から落ちる感じ。
一日声をかけ、なでて少しでも楽になるようにとそばにいる。
と同時に、なるべく普段と同じように、『特別な日』にしないように。
午後から友達と遊びに行っていたお嬢が帰ってきたときには
もう声もでず、それでも小さく鳴くように口を開けていた。
マメに声をかけていて、あ、と思ったときには
もう旅立ってしまっていた。
小さい時から数々の武勇伝があった『トコ』
ピアノの後ろにはいって出られなくなったり、
アラジンストーブの上に飛び乗って、肉球をやけどしたり、
ミシンの針が動くのがおもしろくて手をだしそうになったり、
私に真っ白なおでこにいたずら書きをされたり、ハンコを押されたり
顔をくしゃ、と掴むと、いや~んとツメで私の手をひっかけてとったり、
洗濯物をたたむ時には、私がやる時には私とかごの間にはいって、
お嬢がたたむ時は、一番邪魔なところに陣取ったり
「邪魔!」「危ない!」「こら!」を一番よく言われた子だった。
『ハナ』や『タク』と同じように火葬にして家に連れて帰ってきた。
同じ火葬場だったのに、二匹の時よりも骨壷が大きくて
それまでもが『トコ』っぽくて
最後の最後まで『トコ』なんだなぁと…
『ハナ』や『タク』を見送った時と違い、
今回はお気に入りのクッションや水入れ、エサいれ、トイレ、箱などなどを片付ける。
何の気なしにめぐらせる視線は、いつも猫たちの居場所を確認していたから
そこにあるべきものがないことに、とてつもなく寂しさを突きつける。
一番いい場所にいた『ハナ』がいなくなった時は『タク』が
『タク』がいなくなってからは、いい場所を独占していた『トコ』
一番のお気に入りは、お嬢の机のそばの窓側、オイルヒーターの前で
お嬢が勉強していると、家庭教師のように後ろから監視していた。
寝るのもお嬢の部屋。
というか、『トコ』にしてみたら、自分の部屋をお嬢に貸している気だったのだろう。
お嬢を叱っていて長引くと、「うにゃ~」と割り込んでくる『トコ』
朝起きないお嬢を起こしに行くのも『トコ』
普通、猫は小さい子が嫌いなのに、
お嬢にひっついていた『トコ』
かこさとしさんの絵本、「とこちゃんはどこ?」から名前をとった『トコ』
家の中ですぐに迷子になって、でられない~~と鳴いていた『トコ』
その度にあわてて探しにいく『ハナ』としょうがないなと私を呼びに来る『タク』
あっちの世界で、また二匹を慌てさせるのかな。
父が亡くなって引っ越してきたうち。
長姉がでていって、次姉が出て行って、母が亡くなっても
猫たちはずっといたうち。
そのうちの中から猫が消えてしまった。
実家はとうにない私だけど、実家とのつながりもなくなってしまった。
今朝、お嬢がポツリと言った
「あっち(仏壇)のほうがにぎやかになっちゃったね」
私の両親と、猫三匹…にぎやかにならなくていいのにね。
猫は気まぐれだし、気に入らないと食べないのはいつものことなので
特に気にしていなかった。
金曜日、やっぱり食べない。
土曜日、がくっと全身の肉が落ちる。水ばかり飲む。
無理やり食べさせるものの、嫌がる。
でもトイレには自分で行くが、夜になるにつれ失敗するように。
20歳を越えているから、いよいよ介護かな、
できるだけ今までと変えないように、でも『トコ』が使いやすいように
ご飯やトイレの場所を変えようと思っていた。
日曜日、起きたらトイレ失敗のあと。
お気に入りのクッションの上でぐったりとしている『トコ』は
すでに尋常ではなかった。
毎日「うな~んうな~ん」と大声で鳴くくせに、
力なく「うにゃ」というだけ。
なでてやるとしなやかさは全くなく、骨の一つ一つがわかる。
お気に入りのクッションから、よたよたと降りてきたものの
畳の上でぜいぜいと寝ている姿は、あまりにも痛そうだと
クッションの上にもどしてやるとやっぱり出てくる。
どうやらまぶしいらしい。
よくみると、瞳孔が開いている。
外にでない子だから、毛がつやつやなのはいつもと同じだけど、
やわらかさが全然違う。
『その日』が来ているのが嫌でも分かってしまう。
坂道を転げ落ちる様というけれど、心情的には崖から落ちる感じ。
一日声をかけ、なでて少しでも楽になるようにとそばにいる。
と同時に、なるべく普段と同じように、『特別な日』にしないように。
午後から友達と遊びに行っていたお嬢が帰ってきたときには
もう声もでず、それでも小さく鳴くように口を開けていた。
マメに声をかけていて、あ、と思ったときには
もう旅立ってしまっていた。
小さい時から数々の武勇伝があった『トコ』
ピアノの後ろにはいって出られなくなったり、
アラジンストーブの上に飛び乗って、肉球をやけどしたり、
ミシンの針が動くのがおもしろくて手をだしそうになったり、
私に真っ白なおでこにいたずら書きをされたり、ハンコを押されたり
顔をくしゃ、と掴むと、いや~んとツメで私の手をひっかけてとったり、
洗濯物をたたむ時には、私がやる時には私とかごの間にはいって、
お嬢がたたむ時は、一番邪魔なところに陣取ったり
「邪魔!」「危ない!」「こら!」を一番よく言われた子だった。
『ハナ』や『タク』と同じように火葬にして家に連れて帰ってきた。
同じ火葬場だったのに、二匹の時よりも骨壷が大きくて
それまでもが『トコ』っぽくて
最後の最後まで『トコ』なんだなぁと…
『ハナ』や『タク』を見送った時と違い、
今回はお気に入りのクッションや水入れ、エサいれ、トイレ、箱などなどを片付ける。
何の気なしにめぐらせる視線は、いつも猫たちの居場所を確認していたから
そこにあるべきものがないことに、とてつもなく寂しさを突きつける。
一番いい場所にいた『ハナ』がいなくなった時は『タク』が
『タク』がいなくなってからは、いい場所を独占していた『トコ』
一番のお気に入りは、お嬢の机のそばの窓側、オイルヒーターの前で
お嬢が勉強していると、家庭教師のように後ろから監視していた。
寝るのもお嬢の部屋。
というか、『トコ』にしてみたら、自分の部屋をお嬢に貸している気だったのだろう。
お嬢を叱っていて長引くと、「うにゃ~」と割り込んでくる『トコ』
朝起きないお嬢を起こしに行くのも『トコ』
普通、猫は小さい子が嫌いなのに、
お嬢にひっついていた『トコ』
かこさとしさんの絵本、「とこちゃんはどこ?」から名前をとった『トコ』
家の中ですぐに迷子になって、でられない~~と鳴いていた『トコ』
その度にあわてて探しにいく『ハナ』としょうがないなと私を呼びに来る『タク』
あっちの世界で、また二匹を慌てさせるのかな。
父が亡くなって引っ越してきたうち。
長姉がでていって、次姉が出て行って、母が亡くなっても
猫たちはずっといたうち。
そのうちの中から猫が消えてしまった。
実家はとうにない私だけど、実家とのつながりもなくなってしまった。
今朝、お嬢がポツリと言った
「あっち(仏壇)のほうがにぎやかになっちゃったね」
私の両親と、猫三匹…にぎやかにならなくていいのにね。