お待たせいたしました! 日めくり万葉集シリーズ、
村治佳織さんの登場です。
な思ひそと 君は言ふとも 逢はむ時 いつと知りてか
我が恋ひざらむ ~万葉集 巻2・140~
依羅娘子(よさのみのおとめ)
現代語訳
そんなに思い悩むなとあなたは言うけれど、再びお会いできる日をいつと知って、私は恋せずにいたらよいのでしょうか。それがあまりに不確かなので、恋せずにはいられないのです。
選者;村治佳織さん
村治さん
この歌はリズムがよくて、響きも柔らかい感じがします。一方で切なさも感じられて、読んだ時にピンとくるものがありました。
~柿本人麻呂の妻である依羅娘子が、人麻呂の旅立ちに詠んだ歌です。
村治さん
女性にとってはたいへんな時代だったと思うんです。いまなら電話やメールなど、何らかのアクションを起こすことができます。でも、この時代は楽器を弾いたり歌を詠むなどして、逢いたいという気持ちを表現していたんでしょうね。だからこそ想像力は高まるし、いい歌もたくさん生まれたのでしょう。
いまの時代は確かに便利です。でもこういう歌を読むと、想っている相手にすぐに連絡するのではなくて、ちょっとタメてみる、そんなことをしてみたくなりますね。
~柿本人麻呂は石見の国(今の島根県)に役人として赴任していましたが、都に帰ることになりました。この歌は、夫との別れを悲しむ妻の歌です。万葉の時代の恋愛は、海外生活が長い村治さんにとって興味深いものがあると言います。
村治さん
いまは欧米人のほうが恋愛に関してはオープンだと言われています。でも日本はかつては、上流階級の人たちは自由に恋愛を楽しんでいました。逆に昔のヨーロッパでは宗教上の理由から禁欲的な部分があったようです。
私は万葉集をまだ少ししか読んでいませんが、もっと読んでいくと、激しい恋の歌に出会えるかもしれません。日本人は、外国人からは控えめだと見られるし、自分たちもそういうイメージを持っていますが、万葉集を通して違う世界を知ることができるかなと思います。
優れた音楽家であり、感性の持ち主である、村治佳織さん。
どこか哀愁を感じるギターの音色と、この歌の持つリズムと切なさに共通性を見出して、惹かれるものがあったのでしょうか?
万葉の時代の恋に想像力を働かしているところも素敵ですね(*^.^*)