さかのぼること2003年12月10日。
この地上に舞い降りた白と茶色の天使、
それがぼくですから。
とある計画性のない夫婦が
偶然ペットショップの前を通りかかって
まんまとぼくの可愛さの虜となり、
ぼくの「匠」としての犬生が始まったのでありましたから。
怪力で暴れん坊で
たまごちゃんをこよなく愛し
股間を安住の地とし
ぼくのすてきな口臭から発足した
「さかな臭の会」や
ぼくの素敵なライフワークから発足した
「砂まみれ犬鑑賞倶楽部」といった
数々の有意義なサークルを生み出した
伝説の迷犬名犬、それがぼくですから。
キマった・・
そんなぼくのおもしろおかしい犬生の陰には
度重なる怪我や病気との闘いもあり。
両脚靭帯断裂や膀胱結石、腎臓手術・・
けれど犬は一度たりとも負けることなく
何度でも不死鳥のようによみがえりましたから。
まじフェニックス豚野郎ですから。
そんなぼくって
みなさまのご想像の通り
もうモテちゃってモテちゃって
犬在るところに女在り・・
若きイケメン時代はもちろんのこと
ジローラモ的いぶし銀になってもなお
ぼくに群がる女は
後を絶たないのでありましたから。
もちろん、女だけでなく
フレンドとも素敵な思い出いっぱいですから。
一時期うちに住んでた妹分のしらこ。
元気かな？
じゃっかんしつこいぼくなので
相手にドン引きされることもしばしばだったけど
ほんのちょっとだけ
愛情深すぎるだけですから。
フレンドがうちに遊びに来てくれると
なぜか彼らの舎弟になってしまうぼく。
うちの芝生でよければ
好きなだけへそ天してってくれてかまいませんから。
なんなら一緒に練習しますから。
海で走り回るのはいちばんのお楽しみ。
竹内豊と反町隆史になりきった
ビーチボーイズごっこも楽しかったなあ。
ダイヤ姐さん、おっかなかったなあ。
おっさんずミーティングも楽しかったなあ。
協調性のない飼い主のせいでワン友少なめなぼくだけど
はじめてのオフ会でたくさんジャックラッセルに会った時は
まじみんな白と茶色でしたから。
それから、ぼくの人生のターニングポイントといえば
こいつ。
ぼくの犬生後半は
にんげんのおとうと「おにぎり」の
世話と教育に捧げたと言っても
過言ではありませんから。
おもちゃの破壊方法を伝授してやったり
ヘそ天を教えてやったり
周囲に危険がないか
常に見守ってやり
さんぽに連れて行ってやったり
なんなら風呂に入れてやり
ぼくはこの家の長男として
愚弟に犬への礼儀とリスペクトを
しっかり叩き込みつつ
立派なクソ生意気野郎に育て上げましたから。
して、令和元年に16歳を迎えたぼく。
波乱の予感に満ちた2020年が幕を開け、
3月。
犬はおもむろに
旅支度を始めましたから。
飼い主が買ってきた
（20%割引シールの貼られた）和牛ステーキと
金時芋とこんがりトーストをもぐもぐ。
それからはもう
食べ物に興味はなくなり
横にならせていただくことにしましたから。
横になりつつ弟を見張る名犬、
それがぼくですから。
3日間ほどかけて体の中をすっかりきれいにして
神様の元に向かう準備が整ったところで
ちょうど週末がやってきましたから。
（犬の計算通り。）
飼い主と父ちゃんとおにぎり、
ぼくの家族みんなが家にいる
静かな土曜日でしたから。
ぼくはまさに
「今しかない」というタイミングで
空に向けて
「ウォゥ！（アディオス）」
とひとこと叫ぶと、
軽やかに肉体を離れましたから。
我ながら完璧なまでに華麗なるテイクオフ・・・
なのに飼い主たちときたら
タクにちょうどいい入れ物がなくてごめん
とか言いながら
ハワイアンウォーターの箱にぼくを入れやがりましたから。
まあ、いいか。
おにぎり野郎は
オバケになったぼくの姿が見えるらしく
「タクそこに座ってるよー
」
とか言いやがりますから。
化け犬ナメたら承知しませんから。
アディオスみんな、アディオス地球。
犬は、ちょいとガタがきてた肉体から自由になって、
天国でブイブイ言わせてやりますから。
（イメージ図）
好き放題へそ天しても
風呂に入れられる心配もありませんから。
（イメージ図）
これまで犬が出会ったすべての魂に
飼い主に代わって
心よりお礼申し上げますから。
エビバデセンキュー。
シーユー。
アイラブユー。
元祖笑う犬・匠より。