洋「ふーう」
???「おはよう、洋くん」
洋「わわっ……美織先生。おはようございます」
出逢いがしらに、ぼくは軽く会釈を返した。
市川美織「……秋風が吹く季節になったわね」
洋「あ……はい」
通り過ぎようとしている風が木々を揺らし、かすかな音を立てた。
美織先生は、ものうげに空を眺めていた。
夏期講習で、現代国語を教える臨時講師だった彼女……。
二学期からは、正式に講師として採用されている。
思えば、美織先生がこのツイッター荘に引っ越してきたのが不思議な夏の始まりだったのかもしれない。
本人は「私の授業ほど無益なものはない」と言うものの、その授業はわかりやすく、評判がよかった。
美織先生の視線の先には大きなクスノキが立っている。
古いアパートであるツイッター荘と、同じくらいの樹齢の樹で、そのまわりは、ちょっとしたハーブ園になっていた。
庭の手入れは、美織先生の独壇場だ。
ぼくたち男衆は、雑草と間違っても有用な植物も一緒に抜いてしまうということで、やらせてくれない。