アメリカ大陸横断のドライブは夢に溢れていますが、一歩間違えると本当に危険な体験をします。

私はアリゾナ砂漠の中、車が砂にハマって動かなくなり、猛暑の砂漠の中を2時間ひとりぼっちで歩いて助けを求めるという体験をしました。今でこそ思い出話ですが、本当に命を落としかけた体験でした。

アメリカ大陸横断のドライブ計画を練っている方、アリゾナ州やユタ州などのアメリカ原風景エリアの観光地を訪れる予定のある方は、是非ご一読頂けると幸いです。
 
2016年夏。私は長期休暇を使い、アメリカ大陸一人旅の真っ只中でした。NYやワシントンDCを観光後、コロラド州デンバーからレンタカーに乗り、ロサンゼルス方面へ。右側通行右ハンドルも慣れ、ロッキー山脈・ユタ砂漠を駆け抜け気分は最高潮。周囲が赤土に染まり、アメリカ原風景の代表アリゾナ州の観光が始まった時に、それは起こりました。
 
その日、アリゾナのページという街に宿泊をしていました。朝目覚め、最初の目的地である「ホースシューベンド」に向かうべく、9時半頃にホテルを出てカーナビを合わせました。
 
▼ホースシューベンド

 
私が借りた車は、大手レンタカー会社で借りた日産・アルティマ。乗り心地もよく一人旅には贅沢な車でした。カーナビは車の標準装備のものを使いました。当初はレンタルポケットWi-fiとGoogleMapを使用予定でしたが、Wi-fiの容量が1日5MBまでなので断念。ただ、車の標準装備のカーナビも、古い見た目の割に不満なく使えていたので、いつの間にか慣れていました。
だから、その日もカーナビを「ホースシューベンド」に合わせ、coopermine roadという道を走っていました。
 
▼coopermine Road
赤土の中をひたすら一直線に進むルート。一定の交通量がある幹線道路です。

 
ページを出て20分、カーナビが0.5mile先を右折という指示を出してきました。ところが、右折するべき道に近づいたとき、私はそれがただのダートロードであることがわかりました。
 
▼実物に近いもののイメージです

 
驚いた私は右折せずに通り過ぎてしまいました。人気のない砂漠の中への一本道。一人で入っていく勇気は私にはありませんでした。
「別ルートを行けば良い」そう思いカーナビの指示を無視して走り続けましたが、カーナビはそのダートロードに入るよう何度も指示を出し続けました。

どうやら、そこ以外にホースシューベンドへの道はないと言いたいようでした。私は脇に車を止め、周りの道路を確認しましたが、確かにカーナビ上ではその道以外にホースシューベンドへ繋がる道はありませんでした。
 
貴重な旅の時間を消耗していた焦燥感から、「あの道を行ってもいいかもな」と考え始めました。著名な観光地であるホースシューベンドへの唯一の道なら、一定の車の通りもあるだろうし、最低限の舗装もしてあるだろうと考えたからです。私はダートロードを行く決断をしてしまい、砂漠の中に入っていきました。
 
しばらく経つと、周囲は完全に砂漠のみとなりました。少し気になったのが、すれ違う車や後続車が全くいないこと。本当にこのまま進んでよいのかという不安から、早くこの道を出たいという思いが芽生え、アクセルを踏み込みました。

そんな調子で10kmほど走った頃、何かに絡んだ感覚と共にタイヤの動きが急速に鈍くなり、車が急停止しました。タイヤが砂にすなにはまったことは直感的にわかり、大変なことになってしまったと思いました。

ドアを開けると、砂の中にタイヤが半分ほど沈んでいました。砂をかき分けようともしましたが、すぐにそれが無駄なことに気付きました。バックをする、ギアをニュートラルにして思いっきり押すなどを試しましたが、一人じゃどうにもなりませんでした。焦りがどんどん大きくなります。携帯電話は圏外でした。周囲を見渡すと、日陰になる木すら生えていない赤土と枯れ草だけの景色。真夏のアリゾナ、激しい乾燥と照りつける日光に加え、気温は40度近くありました。
 
▼雲一つない炎天下でした(実物に近いイメージです)
 
「どうしよう、誰かが通るのを待つか?」
これは最初に浮かんだ選択肢でした。
ただ、その時すでにダートロードに入って30分以上経ちましたが、車は一台も見かけません。そんななか、どのくらい待てばよいのでしょう?夕暮れまでもまだ12時間近くありました。また、こんな猛暑なので車の外では待てません。車内でクーラーをつけて待つことも考えましたが、半分が砂に埋まっている車でエンジンを回す勇気はありませんでした。

となると、来た道を歩いて戻るしかないと思いました。炎天下の中ではありますが、2-3時間無事に歩けば、一定の交通量があるcoppermine roadに戻り、誰かしらに助けを求めることが出来ます。また、私には幸い水がありました。旅に出る前周囲から受けた、「非常事態に備えて非常食と水を1ダース買っておくこと」というアドバイスを聞いて買い込んだペットボトル500ml1ダースが車に残っていたのです。

悩んでいる時間もないと考えた私は、その作戦に賭けることにしました。リュックの荷物をすべて出してペットボトルを詰め込んだ後、車を背に歩き始めました。とはいえ、無事にcoopermine roadまで戻れるかどうか不安でした。万が一途中で倒れるようなことがあったら、誰かが見つける頃には死んでいるだろうと思いました。

凄い乾燥でした。私は駄目だとわかりながらも、脱水症状への恐怖から水を飲み続けてしまいました。また、熱さの防止に体や髪にも水をかけ続けました。そうして不安を和らげないと、恐怖に押しつぶされてしまいそうな気がしたからです。圧倒的なスケールの大自然の中、一人きりになる感覚は、本当に恐ろしいものですよ。今でも当時の感情を思い出すと身の毛がよだちます。木陰もない炎天下の砂漠の一本道、ひたすら歩き続けることしか出来ないのですから。
 
そして、2時間ほど歩いたとき、ようやく私に救いの兆しが見えました。砂漠の中に1軒の家を見つけたのです。助けを求められるのであれば誰でも良かった私は、その家に助けを求めることを決め、歩く方向を変えました。

30分ほど歩きその家の前に着きました。テレビの音が聞こえとても安心したのを覚えています。ドアを叩くと、テレビの音が消えました。ところが誰も出てきません。居留守使われたらたまったもんじゃないと考えた私は、ドアを叩きながら「プリーズヘルプミー!アイムジャパニーズ!」と大声で叫びました。しばらくすると、一目でネイティブアメリカンと分かる高齢の女性が出てきました。砂漠の中、徒歩で訪れてきた男を見て、彼女は訝しげな様子でしたが、拙い英語で事情を説明すると、私を家に招き入れ、冷たい水を飲ませてくれました。
 
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その後はその女性と女性の友人のネイティブアメリカンの協力を経て、車を引き上げることができました。
彼女達はネイティブアメリカン最大級の部族であるナバホ族の方々で、本当に心の優しい人達でした。なんの縁もない私に沢山の水や食べ物を施し、私一人のためにたくさんの方が集まってくれました。(ただ、どんな方法も上手くいかなかったので、ページの街のトラック業者に引き上げてもらいました。)
 
ナバホ族の方によると、僕が入ったダートロードは、4WDやトラックしか通行が出来ない道だそうです。ただ、入り口にはそのような標識は全くなく、カーナビでも出てくるため、僕のように砂に絡まる車が時々いると言っていました。
 
また、私が向かっていたホースシューベンドへは、宿泊したホテルから車で10分もかからない道で行けたことも教えてくれました。私の持っていたカーナビの情報が古いのか、その道が画面上にありませんでした。

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そんな経験もしましたが、アメリカのドライブは本当に素晴らしいものでした。その後は、無事にたどり着けたホースシューベンドや、モニュメントバレー、グランドキャニオンなどの名所を隅々まで渡り、ラスベガス、ロサンゼルス、モロベイ、モントレー、サンフランシスコ、ヨセミテを巡りました。一生の思い出を残すことが出来ました。

ただ、これからアメリカドライブを考えている方には、以下だけは心に留めてほしいと思います。
 
・何が起こるかわからないので、長距離ドライブをするときは非常食と水を用意すること

・古いカーナビはあてにならない時もあるので、信頼しすぎないこと(アナログ地図と上手に使い分けること)

・幹線道路以外は、絶対に!走らないこと

僕のこの体験が少しでも多くの人の旅をより素晴らしい物にできることを祈っています。