Lockdown Day 13 「Air hug」 | 野口卓磨のブログ

Lockdown Day 13 「Air hug」



どんどん朝起きるのが遅くなっています。
でも、体の調子は昨日よりさらに上向いています。

引き続き、規則正しいルーティンを捨てて、目が覚めてる間に好きな事をする。
そのかわり、「1日にひとつだけ些細な事を達成する」。
それが今の自分には精神的な健康を生みます。
それはどんなに些細な事でもかまいません。

例えば、「普段掃除できなかったところを掃除した」
とか、
「コンタクトの保存液を手に入れた」
とか、
「Netflixとか、Amazonプライムの動画配信をこっちでも観られるようにする」
とか。
どれもこの留学には関係ないし、子供のお使いのようなハードルのものです。

もちろん台本を読みたかったら読むし、
英語も勉強するし、
筋トレしたかったらするし、
ストレッチに時間を費やしたり、
振付を思いついたら踊ります(そんな事、日本ではしたこともないけど!)。
大切なのは、それらは自分のやるべき「特別な事」と認識しなくていい、という事です。

自分の身体が今求める欲求に「ただ従う」。
休みたいなら、休ませる。
それが、今、自分の身体に必要なら。
世界に耳を澄ますのと同じくらい、
自分の身体の声を聴く。
それが最も、今の世界に、自分を順応させる賢明な手段だと思います。

おそらく他のクラスメイトも同じで、
グループへのメッセージが、今週になってどんどん減りました。
みんな、この連絡を取り合う生活に疲弊しています。
孤独は嫌だけど、
それぞれの心地よい距離を保つ必要がある、
その事を今全員が自覚しています。
一緒に公演を打つメンバーも同様のストレスを感じています。
そして、「同様の問題をお互いが抱えてはじめている」という事実が、私たちのストレスを軽減してくれました。
一歩前進です。


アメリカとオーストラリアの政府から、帰国者やロックダウン中の国民への補償が発表されたのを受け、今夜2人クラスメイトがこの街を去りました。
なので、私が今日達成した些細な目標は、

「外出は避けた方がいいけど、一生会えなくなる可能性があるクラスメイトの家(1キロ圏内なので問題なし)を訪ね、窓越しに『さよなら』を言う」
でした。
見事達成されました。
とても切なかったですが、1キロ圏外のクラスメイトは挨拶に来られないので、みんなの分まで自分は最後に笑って別れられてよかったです。

2人ともそれぞれの国で、さらに14日間の隔離を余儀なくされます。
自分が聞いた話では(さだかではありませんが)、
アメリカは約13万円の補償をするそうですが、帰国者の隔離中の補償に関しては、まだ言及してないそうです(クラスメイトの話では)。
オーストラリアは、隔離中のホテル代なども政府が負担するそうです。
「これで帰れる!」と嬉しそうに帰っていきました笑 


別れ際、エアハグをしました。
お互いに強く強く、ゲラゲラ笑いながら。
これはこの新しい世界の、馬鹿げた、素晴らしい挨拶です。
信じられないことですが、空気の中に、お互いの触感の記憶を感じました。
稽古の時、触ったり、掴んだり、押し合ったり、投げ飛ばしたり、投げ飛ばされたりしたあの当たり前の触感です。
そんなに昔の事ではないのに、それは、とても懐かしく、素晴らしい感覚だと感じました。
この馬鹿げた挨拶は、
実際に触れるより、相手に触れられたような、そんな錯覚をくれました。

次に会う時は、本物のハグをします。
日本が心配です。
感染者が1人でも少なくおさまることを、祈るのみです。

※ 写真は別の日に、丘を散歩した時に偶然会った別のクラスメイトとした、エアハグです。