野口卓磨のブログ

≪出演情報≫

2016年7月15日(金)~17日(日) 
マグカルシアター参加
waqu:iraz03「わたしたちのからだは星でできている」
2016年7月15日(金)~17日(日)
神奈川県立青少年センター 多目的プラザ (桜木町)

演出・構成・振付:小林真梨恵(waqu:iraz)
脚本:高木充子(劇団桃唄309)

出演:
秋瀬拓
石田迪子
桑原史香
小山貴司
関森絵美
曽田明宏
髙橋優太(演劇実験室◉万有引力)
長尾純子
野口卓磨
古市裕貴(ユニークポイント)
松本寛子
小林真梨恵(waqu:iraz)


7月15日(金) 15:00≪プレビュー≫ / 19:45
16日(土) 14:00☆ / 18:00
17日(日) 12:00  / 16:00
☆印の回 親子観劇デー
キャストの紹介、ご予約方法など、詳細は特設サイト をご覧ください!
   
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Lockdown Day 62「Artists like crisis」



おはようございます。
エタンプはただいま、夜の12時半です。
日本の皆さん、元気でしょうか?
最近家族と話したり、Twitterのタイムラインを眺めてると、日本の皆さんのストレスは3週間くらい前の自分の状況に近いのかな?もっとかな?
どうなのかな?と感じたりします。

あの時、色んな方が連絡をくれて自分は何とか乗り越えられました。‬
あの心遣いがなければ、とっくに心が折れてました。
だから今は皆さんが心配です。
何かみんなが元気になるニュースを届けられるといいのですが。。

明日11日からついに、フランスはロックダウンが解除されます。
この2週間にも色々なことがありました。
というのも、皆さんももうよくご存知のように、自粛生活はどんなに退屈であっても、本当に忙しいです。
例えば一昨日は、初めて規則を破って、人と外で待ち合わせしました。
というのも、クリストファーが「どうしても映画のオーディション用のテープを撮りたい。締め切りが迫ってるのでだれか手伝ってほしい。30分以内に終わる」というので、
事情が事情だし、外出制限時間内だし、カメラマンなら手伝えるなと思い手を挙げました。
(何やかんやで1時間かかりました。これで警察に捕まったら、罰金は絶対こいつに払わせようと思いました笑)

クリストファーの相手役、アリソンと3人で、エタンプ城のほとりで、お互いに十分な距離を取り撮影したわけですが、
私はこの時、とても驚くべき、当たり前の体験をしました。

設定は、
認知症の父を持つアリソン、
その旦那がクリストファー、
認知症が進行し、クリストファーを認知できなかったアリソンの父は、彼の手に怪我を負わせてしまう。
アリソンの運転する車で、クリストファーは急いで病院へ。

課題となるシーンは、
「病院での診察を終え、車に乗り込むクリストファーとアリソン。クリストファーの手には包帯が巻かれている。重苦しい空気の中、車の中で夫婦の会話が始まる」
という、映画でよくありそうな、とても良いシーンでした。

自分の合図でカメラを回し、演技が始まったわけですが、始まってすぐに懐かしい感覚が、踵から電流のように頭のてっぺんに走りました。
それは実に久しぶりに、「人の演技を間近で観た」感動でした。
この感覚は「観劇」でした!!
観客は、地球で自分だけです。
感動でカメラを持つ手が震え、でも震えちゃうとクリストファーはオーディションに落ちちゃうから、何とかそれを抑えるのですが、またぶるぶる震え出すんです、体が笑笑(カメラチェックしたら、何とか手振れは大丈夫でした)

その後、テイクを重ねても、ずっーと感動で震えました。
クリストファーの演技に頭の中でたまにダメ出ししたり、いいぞその調子だ、と思いながら、この体験に感動している自分。
この懐かしい感覚は、今の自分にとって大きな希望です。


この撮影をする前、
くものうえせかい演劇祭の、岩井さん、やなぎさん、タニノさん、宮城さんのトークを観ました。
ドキッとする言葉の連続で、視座が増え、本当に聴けて幸運だったのですが、特にその中でタニノさんが、アバターとして観劇に参加することや、VR演劇の可能性について言及されていて、とても面白かったです。
というのも、タニノさんの作る演劇と舞台美術を観て、勝手に自分はタニノさんが「最も劇場に行くこと」を重視している、そこに強烈にフォーカスしている演出家だと思ったからです。
でも、タニノさんはおそらく「劇場で」ということ以上に、「観劇」という体験そのもの、その仕掛けや可能性を、普段から人よりずっと沢山考えて、ワクワクしている方なんだと思い、唸りました。

VR演劇は、フランスでも何人かのアーティストが始めていて、気になっていました。残念ながら自分はこのパンデミックで観られなくなりましたが、演劇に限らず、アート作品にもどんどん多用されています。シャイヨー劇場でも上演されていました。

VR演劇や、遠隔での表現が全盛になったら、自分のような俳優や、これまでの技術スタッフさんはどうなっちゃうのかなぁ、と思ったんですが、
私はクリストファーの芝居を間近に観て、あらためて、まずその破壊力に痺れました。
この破壊力は特別な効用を持つし、
素晴らしい凶器だと改めて思います。

VRで体験する身体感覚が、限りなく私たちの知る劇場体験の感覚に近づいたり、あるいはその感覚を超える新しい感動が生まれたとしても、
「知ったこっちゃねえな」と思えました。

タニノさんの言葉を借りるならば、
「やっちゃえばいい」と思いました。
自分の信じる表現を。


先日、フィリップ首相から会見があり、どのような段階を踏んでロックダウンを解除していくかが発表されました。

それを受けて、自分の学校の再開が秋になる事が公式に決まりました。

つまり、三学期は全て休校です。

正直、95%その覚悟ができていても、実際に宣告されて「いよいよこの時がきたか」と思いました。部屋はもともと静かなのに、お葬式みたいでした。


さらに学校から電話がきました。 

「ごめんね、大変な時に来ちゃったね。どうする?」と。学校も、誰も悪くありません。

「自分はエタンプに滞在します。学校で学んだ事を使って、ここに残る仲間たちと芝居を創りたいので」と伝えると、笑いながら、

「俳優っていう生き物はそうなんだよね笑 何かあると必ずそれを確かめようとする。分かった。どうせなら、卒業制作だと思ってやりなさい。いいじゃん、いいじゃん、それが1番の研修になるから」と、言っていただき、 

①三学期に学ぶ予定だった事に関しては、特別に可能な限りリモートで学ぶ。

②必要に応じて課題も出される。

②演劇の創作を研修の最終課題とする。

ことが決まりました。



「‪クライシスっていうのを、アーティストは好きなんですよね。これはもう正直にみんな告白すべきだと思いますけど。生と死が迫ってくる感覚っていうのかな」
と言ってくれた、やなぎみわさん。

私はその感覚を認めざるを得ません。
わたしは好きです。
この留学中、自分の身に降りかかった危機が、困難が。行く先々で助けてくれた人たちと同じくらい。
だから外に出たら、ちゃんと今回も確かめたいと思います。
このクライシスの先に何があるのか。
この身体を目一杯使って。


日本のみなさん、
美味しいもの沢山食べて、
好きな音楽を聴いて、
心もどうか、健康でいてください。

外に働きに出なければいけない人、
店を開けなきゃならない人が、
誰かに傷つけられたり、
感染したり、させたりしないことを心から祈ります。
祈ってます、毎日。
では、また!

Lockdown Day 42 「Solitude」


こんにちは、みなさん。
今日は私と、私のクラスメイトが今創ろうとしている新作について少し話します。
このご時世において、何て明るい話題なんでしょう!

私たちが創ろうとしている舞台は、「ロックダウンの前夜から、ロックダウンにかけて私たちに何が起こったのか。閉ざされた町で私たちに何があったか」
をそれぞれの視点と言語(日、英、伊、波)で回想する物語(になる予定)です。

ロックダウン2日前からロックダウンにかけての記憶は特に凄まじいものでした。
すれ違う人との挨拶が減り、お互いを注意深く観察するようになりました。
いつものCafeも、レストランもシャッターが閉まり、店主も国に帰りました。
ハイスピードで街から人がいなくなり、変わりに見たことのない鳥や虫が増えました。
そして今、
猫は道路の真ん中を歩き、
ホームレスが増え、
花は場所を選ばずあちこちに咲き、
空の蒼は勝ち誇っています。

偶然、この間街でクラスメイトのクリストファーに会って、距離を取りながら近くのお城まで散歩した時のことです。
彼は「Solitudeは好きか?」とふいに聞きました。私は恥ずかしながら、その単語を知りませんでした。ずっとlonelinessを使ってました。
「ん?ソリ?ん??」みたいになりました。
「俺は好きだ。この生活は確かに狂ってる。うんざりだ。でもこうやってこの誰もいない街を見渡して、静寂の中に1人ポツンといるとSolitudeは悪くないと思える」と言いました。
その気持ちに、深く深く共感します。

まったく不思議な話ですが、
ロックダウンが早く終わればいい、早くみんなと稽古したいと、毎日毎日痛切に思っているのに、
「この静寂が、この色彩が、もうすぐまたこの街からなくなるのか」と思うと、その事に苛立ちに似た悲しさを覚えます。
もし、このロックダウンをさらに続け、自分の生活を犠牲にすることで世界の変化や、これまでの人類(つまり自分たちの)の横暴さ、世界の美しさにそれぞれが気づけたり、新たな知恵を発見できるなら、それが最善だと思えるんです。
こんなに外に出て、みんなと自由に走り回りたいのに。
その事に混乱します。
自分が今いる静寂は、そういう種類のものです。
(日本とは異なるでしょうか??)

というわけで、自分はこの体験から感じ取った日常の変貌と、世界の変化をなるべく丁寧に掬い取りたいのですが、
「ちゃんとそこにフィクションを入れよう。なるべく大きな嘘をつこう。あくまで嘘をつきたい」ということをメンバーに伝え、みんなと意見が一致しました。
なので、何の教訓もない、楽しい変な芝居ができることを切に願います。

私は台本を書いたことがありません。
そもそも自分が書いた物を上演する、という話にもなってません。
でも、初めて書かなくてはいけない、書けるところまで書こう、と思いちょっとずつ書いています。
他のみんなも何がしか書いています。
書くのは苦しくて、楽しくて、苦しいです。
この記事を読んでいただければ分かる通り、向いてません笑
文才が欲しいです。
でもとにかく今は書きます。

チームメイトのオリビアは、「タクマ、ロックダウンが開けたらすぐに外で稽古を開始しよう」と言いました。
「集会はダメでも、外出許可が緩和されれば、お互い距離をとって、茂みで稽古できる。ポリスが来ない良い茂みを知ってる。そこで毎日稽古できるよ、タクマ!」と言われ、思わず笑いました。
公園や河原で稽古したことはあるけど、ついに茂みかと。

いつか無事に芝居が完成したら、どうぞ「これが茂みで作った芝居か」と思って観てください。


※このブログを読んで、色んな形でメッセージを下さる方が度々おられ、沢山励まされております。ありがとうございます。
全部返信できているわけではないので、ここで失礼いたします。
そのどれもが「日本に比べてさらに厳しい環境の中」という様な視点で慮っていただき、大変恐縮です。
ただ、フランスの方が大変だと一概には言えません。それぞれの大変さを察し、励まし合いながら、注意深く生きることしか私にはできません。そして毎日、自分自身と、日本の家族や日本にいる人たちの安全を祈っています。
どうか引き続き、なるべく外出を控えて、安全に過ごしましょう。
そして、劇場で会いましょう。

Lockdown Day 28 「New world, new architecture」


ロックダウンはついに2ヶ月目に突入しました。

また昨日マクロン大統領から、5月11日までロックダウンは継続され、その後、段階的に解除していくことが発表されました。

学校からのメールでは、3学期のカリキュラム「キャラクター」、「シェイクスピア&チェーホフ」、「クラウン」のうち、「キャラクター」がまずキャンセルされることが発表されました。
早ければ、「シェイクスピア&チェーホフ」から再開されるそうですが、
昨日のマクロン大統領の声明から判断すると、かなり厳しいと認識しています。
なので、非常に落ち込みました。

このロックダウンを乗りきる知恵を、私はついつい忘れがちなので、もう一度ここでみなさんとシェアします。
それは、「希望を抱き過ぎない」ことです。
学校からのメールを見て、隅に追いやった希望をうっかりまた抱いてしまったので、今は大変辛いです。
気をつけます!

先週ずっと悩まされていた不眠症は、
色んな人のユニークなアドバイスを全て試しても全く改善しませんでした。
でも、ある知人に相談したら、簡単な問診が始まり、ただ一言「大丈夫です!」と力強く言われてから、
2時間寝られるようになり、
その次の日はさらに1時間増え、
今は合計で6時間寝られるまで回復しました!
つまり自分の体は、この異国の閉ざされた空間で、ただ一言「あなたは大丈夫です」と力強く誰かに言って欲しかったのだと分かりました。

なのでその日は安心して、
寝る前にベッドの中で、未見だった、範宙遊泳「その夜と友達」の動画を観ました。
そして大変驚きました。
物語の面白さもさることながら、出演者3人の演技がとにかく素晴らしいのですが、
特に大橋一輝さんという方が、本当に繊細で、演技が柔らかくて、なのに演技の輪郭はしっかりしていて、私の知らない素敵な俳優が日本にはまだまだいるんだなと思いました。
ファンになりました。

範宙遊泳の新作も、
五反田団の新作も、
蓬莱さんの演出する舞台も、
CAT-A-TACの新作も中止が決まり、
今の状況ではどこの劇場も仕方がないとはいえ、
この数年でお仕事をご一緒させていただいた方々のニュースは、心にズシンときます。
何とか、延期という形でいつか再開できますように。

前回のブログで触れたけど書けなかったことを書きます。
この度のパンデミックとその先の世界について、ヨーロッパで働く建築家の方と話していた時に聞いた興味深い(と感じた)話です。
ヨーロッパの建築家の間では、この度のパンデミックがもたらしている人類への甚大な被害を踏まえ、建築法が変わるだろうと多くの人が話しているそうです。
それは例えば、建物の高さ、ドアの大きさ、窓の数など、換気に関わる規定に新たな要素が加わるだろうと。
新しいルールに合わせて、沢山の改修が行われるかもしれない。必然的に「これからの現代建築が大きくその姿を変えるだろう」と。
私はその話を聞きながら、どんな新しい建築が生まれるのか、少しワクワクしました。
そして同じ苦境にあって、演劇はどうか。新しい演劇が生まれないか。生まれるのではないか?と。

私がこの留学で習った演劇のスタイル「ブッフォン」も「メロドラマ」も、人々の苦境や、歴史的迫害から発生した演劇であることも思い出されました。
「ブッフォン」は、中世ヨーロッパで、権力を全て握っていた当時の教会から、社会の隅に追いやられた者たち(身体障害者、無神論者、同性愛者、貧困にあえぐ人々など)が、一年に一度だけ披露することがゆるされたパフォーマンスが原型だそうです。
彼らは自分たちを迫害し、排斥した権力者の物真似を、権力者や市民の前でパロディとして演じ、社会を風刺し、神を嘲笑し、笑い飛ばすことで、社会を告発します。
抑圧や、歴史的貧困の中で何かを創造して、それを乗り越え、すり抜けてきた人たちがいつの時代にもいたことは、今、この小さな部屋にいる自分の心が弱った時、そっと背中を支えてくれます。

文化庁への状況報告書を書いて、送りました。
何でも先送りにする自分にしては、2日で書き上げたことを褒めたいと思います!
振り返りながら、クラスメイトと作ったシーンを思い出して少しウルッときました笑
彼らに「うまれてないからまだしねない」の動画のリンクを、学校のグループにシェアしたら、国に帰ったクラスメイトたちからメッセージや「いいね」がきました。

「ハロー、タクマ!あなたのこのゴギブリは、あなたが教室で私たちに見せてくれたpleasureに溢れている!!あの素晴らしい時間を思い出しました。ありがとう。どうか無事でいてください」

おやすみなさい。

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