こんにちは。かなり更新が遅れましたが、博士課程後期の正規留学について、大幅に進展があったので情報共有として記事にしておこうと思います(2024年4月現在)。

 

 結論から述べると、ドイツにて受け入れ先のラボを見つけることができ、先日ドイツで研究をスタートしました。そこで、本稿ではどのようなタイムラインで博士課程の受け入れ先を見つけ、留学まで繋げられたのかを綴りたいと思います。一個人の体験談ではありますが、皆さんのお役に立てれば幸いです。

 

 本題に入る前に軽く自己紹介しておきます。私は地方国立大学で学士、修士をとり、2024年4月からドイツの博士課程に在籍しているtakumaと申します。専攻は化学系です。英語力は多少自信があるのですが特に海外とのコネはなく、今現在学術論文も出せていません。

 

 それでは、以下より本題に入ります。

 

ドイツの博士課程 留学までのタイムライン

 

 

①興味のあるラボ探し (2022年~2023年2月)

 

 2022年に留学について真剣に考え始めてから2023年の2月まで、約半年間かけて自分の興味に合った幾つかのラボをピックアップしました。こちらのラボ探しに関しては、過去に記事を書いているのでそちらをご参照下さい。

 

 

➁気になるラボの教授にメールを送る (2023年3月)

 

 一通り行きたいラボが定まり、決心したところで第一志望のドイツのラボの教授とコンタクトを取りました。PhD studentのポジションに空きがないか、といった内容のメールを私の履歴書と一緒に送りました。その時のメールの文章を一部省略して下記に示します。

 

 

​Dear (先方の名前),

 

I am (自分の名前), a graduate student at (大学名), Japan and I have a major in chemistry. Right now, I am a first year in MS program and expecting to earn a Master's degree in March 2024.

My current supervisor is (指導教員の名前) and I am doing research on “(私の研究テーマ)”. While I was pursuing the research, I read papers from your lab and got exteremely intrigued by your works. I especially enjoyed the paper on “(先方の論文)”. I was shocked to know (論文の感想、面白かった点等).

 

Since then, I have read multiple publications from your lab and I would like to ask for your support and advise on PhD research from after April 2024 if possible. Although, I have read through your laboratory website and I understand that it says there is no cuurently available PhD position.

Here, I attached my CV. I sincerely appreciate taking your time reading this message and I am looking forward for your reply.

 

Best regards,

(自分の名前)

 

 私の場合、幸運なことに先方の教授からすぐに返信があり、後日面談を行う運びとなりました。

 

 余談ですが、渡独後教授に直接伺ったところ、毎日5通以上もPhDのポジションに関する問い合わせがあるとのことでした。このことから、私のような平凡な学生はとにかくメールを読んでもらう工夫が必要だと思います(量より質)。私の場合、関連性がある研究をしていることをなるべく端的にアピールすることを心掛けました。履歴書には実験スキルや測定スキル等を箇条書きで示すことで、研究の戦力になることを伝えることに注力しました。

 

 面談日が決まったところで、面談日までに以下の三つのことを準備しました。

  • 先方の直近20報ほどの論文に目を通す
  • 自身の研究テーマについての発表資料作成(スライド10-15枚程度)
  • 博士課程でどのような研究をしたいかについての資料作成(スライド2、3枚程度)...いわゆるResearch Proposalです

 

③先方の教授とOnline面談(2023年3月)

 

 予定していた日にOnline面談を行いました。実はこの面談の数時間前に学会で発表を終えたばかりであり、とてもハードスケジュールだったのを今でも覚えています。

 

 疲弊している中、予定していた時間通りに教授との面談がスタートしました。まず初めにお互いの簡単な自己紹介から入り、先方の研究室でどのような研究が行われているか説明をしてくれました。

 

 一通り教授からの説明が終わったあと、自身の研究テーマを紹介しても良いか打診したところ、

 

“もちろん!ぜひ聞かせてくれ!”

 

との返答をいただいたので、15分程度の発表時間の資料を用いて発表を行いました。発表中に時折質問をいただき、その都度発表を止めて回答したり議論をしたりしました。この時、恐らく教授は私自身のテーマに対する理解度を測っていたのだと思います。しかし、全く圧迫感は無くとても興味深そうに質問してくれたのでとても弾んだ議論を行うことができました。

 

 また、Research Proposalの発表も5分程度で行いました。私の研究構想を教授はとても熱心に聞いてくれたうえで、

 

"とても面白くて、いい発想だと思うよ。君の知識も活きるだろうね。もしこれが実現したら本当に良い研究だと思うよ。ただ、正直に言うと実現可能性がかなり低いと思うんだ。この分子を合成するのはかなり難しいんじゃない?その辺をもっと詰めることができればより良いテーマになると思うよ。"

 

とアドバイスをいただきました。

 

 そして、面談の終盤に教授から、

 

”実は今、研究費を申請していて来月あたりに結果が出ると思うんだ。その研究費を獲得できれば君をPhD candidate として受け入れるよ。”

 

と条件付きの受け入れ許諾を頂きました。続いて教授から、

 

“それと、奨学金にも応募してみない?もし奨学金に通れば研究費が浮くだけじゃなく、君の経歴がより強力になると思うんだ。奨学金申請書を書くにあたって全力でアドバイスするからさ。”

 

と、提案をいただきました。

 

 このようにして条件付きではありますが、受け入れの許諾をいただくことができました。

 

 

④ラボメンバーとの面談(2023年4月)

 

 面談後、教授にお礼メールを送りました。まず初めに面談のために時間を割いてくれて感謝している旨を伝えてました。加えて、先方のラボメンバーと面談出来ないか打診をしました。というのも、数年間苦楽を共にする仲間がどのような人たちなのか自身の眼で確認したかったからです。すると教授は快く、

 

“勿論さ。私自身も新たに入ってくるメンバーと現メンバーの面談は推奨しているからね。なんでも聞くと良いよ。”

 

と許してくださり、面談をセットアップしてくれました。

 

 当日は先方のラボメンバー3人と面談を行いました。1:1で1人あたり20分程度の面談形式でした。面談では、

•各メンバーのプロジェクト

•ドイツの博士課程後期

•メンバーや教授の人柄

•このラボを選んだ理由

•貰える給料は生きていく上で十分か

•ドイツ国内で英語はどれだけ通じるのか …

•後輩の指導

•将来の夢

などなど、フランクに会話をしました。

 

 面談した第一印象としては、メンバー全員がとても優秀だという事でした。自分がこのラボの一員としてやっていけるのか不安ではありましたが、どの方もとても人柄が良かったため、このラボで博士課程をしたいという気持ちが強固なものとなりました。

 

 

⑤本受入許諾を頂く(2023年5月)

 

 早く先方の教授から連絡来ないかなあとソワソワしていた頃、教授から一通のメールが届きました。

 

“とても良いニュースがあるんだ。この間話してたのとは別の研究費を獲得できたから君を正式に受け入れることができるよ。本格的に奨学金申請書の作成に取り組もうか。”

 

 このメールを受け取った時、とても安心したのと同時に海外で研究が出来ることが決まり気分が高揚したのを覚えています。こうして教授から正式な受け入れが決定しました。

 

 

奨学金申請書の作成(2023年5月~10月)

 

 今回、ドイツの博士課程後期に入学するという事でドイツ学術交流会(DAAD)の研究奨学金に応募することにしました。JASSOのトビタテ!留学JAPANも申請する予定だったのですが、TOEFLを直前まで受け忘れていたため締め切りに間に合いませんでした(笑)。この間に1度、先方の教授とOnline面談を行い申請書のBrush upを行いました。

 

 その後あれこれあって約5ヶ月ほどかけてすべての申請書を作成し、10月末に書類を送付しました。(幸運なことに先日DAADの奨学生として採択いただきました。DAAD奨学金に関する情報も少ないので、後日別の記事で奨学金申請の体験談について記したいと思います。)

 

 

⑦修了、そして渡独に向けた準備(2024年1月~2月)

 

 新年度に入ってから研究ビザの取得や奨学金の面接、ドイツでの住居探し、修論執筆等を行いました。とても忙しかったのを記憶していますが、留学をモチベーションに頑張りました。

 

 

⑧渡独(2024年3月末)

 

 修士課程を修了して1週間も経たないうちに日本を発ちました。とても安いフライトを予約したため、ドイツに到着したころには体がバキバキでした。

 研究室初日は皆が暖かく迎え入れてくれ、入学・雇用手続きなどをサポートしてくれました。ラボメンバーは皆、個性豊かで積極的に対話してくれるので毎日が楽しいです。渡独してから1カ月も経っていませんが、今のところ非常に良いところだなと実感しています。

 

(ラボのビール買い出しの写真です。教授曰く、ビールを切らしていることがあってはいけないそうです(笑))

 

 

最後に

 

 今回は博士課程後期の正規留学までのタイムラインに関して、私の体験を綴ってみました。私が留学を決意した一番の理由は決して高尚なものではなく、単にワクワクしたからです。しかしながら、実際には、こなすべき面倒なタスクであふれかえっており、地道で大変な作業でした。加えて、ドイツの博士課程留学に関しての情報が少ないこともあり、自分が取り組んでいる作業が正しいのかどうか不明瞭でとても不安でした。また、学部時代のGPAも決して高くなく、コネもなく、学術論文も一報も出してない状況では受け入れ先が見つかる気はしませんでした。

 

 しかしながら、今回の体験を通して、一つずつこなしていくと正規留学は十分に実現可能だと感じました。留学を思い立った後は時間と労力を投資するだけだと思います。本記事により、私のような博士課程で留学をしたい方やドイツで研究をしたい方の不安を少しでも解消できれば幸いです。皆さんの検討をお祈りしています。

 

 質問があれば、できる限りお答えますので、お気軽にどうぞ!