そんなワケで今日は『ひかりふる路』の感想など書こうかと…。

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タイトルの“ひかりふる路”は様々な意味が込められてるとか。
一つはフランス革命が目指した『自由・平等・博愛』といった
世の中への道筋、もしくはキラッと刃が光るギロチンへ向かう
道筋…。あと銀橋を新たなトップスターの門出の意味だそうな。

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この一本の斜め線にそこまで深い意味があったなんて驚きです。
でも出演者の衣装にも取り入れられてるし、なかなか奥が深い。

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作・演出 生田大和

演出家の生田先生に言わせると“ロベスピエールという一人の
人間の意志が歴史を大きく動かし、その歴史だけが生き残って
いく時に、彼の人生は何だったのか、そこを人間ドラマとして
描きたい”とのことですが、残念ながら今回の脚本はそこまで
描き切れていませんでした。ルイ16世の処刑裁判に始まって
自身の処刑裁判で終わるという因果応報、悲劇的な展開の中で、
獄中で再会したロベスピエールとマリー=アンヌが総てを許し、
精神的な愛で結ばれるという宝塚歌劇らしい巧みな作劇は勿論、
基本的な骨子は素晴らしいと思うんですけど、歴史的な事実を
深追いするあまりに理想に燃え、突っ走った男の悲劇、という
落としどころが弱く、観客に感動を与えるレベルへ到達出来て
いなかったように思います。歴史的に有名な恐怖政治の演説や
“至高の存在の祭典”等の史実をキチンと取り込んでいたのは
スゴいですけど、ロベスピエールを突き動かす理想の原体験と
その理想を打ち砕く、様々な圧力の構図が整理しきれておらず、
分かり難いのが観客の共感を呼べない最大の原因じゃないかと。

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そうはいっても、全曲を作曲したフランク・ワイルドホーンの
音楽は圧倒的で、望海風斗さんと真彩希帆さんの完璧な歌唱と
共にこの作品を魅力的に見せているのは確かで、そういう点で
良かったと言えなくもないような気がしますが、どうでしょう。

次に配役についての感想を…。

マクシミリアン・ロベスピエール・望海風斗

ただひたすらに理想を追い求め、妥協を許さず、清廉だったが
故に自らを破滅に追い込んでいくロベスピエールを好演。彼の
情熱、温かさ、孤独、その心の変化を情感溢れる演技と歌とで
繊細に表現していました。国を導く気概に溢れる若きリーダー、
ロベスピエールは、これから雪組を引っ張っていく望海さんの
頼もしさにもオーバーラップするような、入魂の力演でしたね。

マリー=アンヌ・真彩希帆

真彩希帆さんはロベスピエールを恨みながら、その真っ直ぐな
心に触れたことで変化していくマリー=アンヌ。仄かな憂いを
漂わせつつ、気品と芯にある強さとを巧みに表現し、運命的に
出会った二人が迎えるラスト・シーンの美しさも印象的でした。

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真彩希帆さんの透き通った美しい歌声はいつまでも心に残ります。

ジョルジュ・ジャック・ダントン・彩風咲奈

理想に突っ走るロベスピエールを何とか宥めようと努力しつつ、
失敗するダントン役を彩風さんが懐の深さを感じさせる大きな
演技で表現。同じ方向を向いていた同志が、いつの間にか擦れ
違っていく様、その心の痛みが観客にも伝わってくるようです。

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カミーユ・デムーラン・沙央くらま

専科から特別出演の沙央さんも、ロベスピエールとダントンの
友人役を生き生きと演じていて『1789』ではダントン役を
演じていただけに何か感慨深いものを感じてしまいましたね~。

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ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト・朝美絢

雪組宝塚大劇場公演初登場の朝美絢さんは、サン=ジュスト役。

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ルイ16世の処刑文書を読み上げるなどして目立ってましたが、
ロベスピエールの思想に傾倒し、ロベスピエールを粛清に導く
役柄的には狂気的な部分が一瞬だけだったし、ひねくれた愛の
表現も物足りないしで、あまり面白みが感じられませんでした。

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ロベスピエールがサン=ジュストに囚われていく様をもう少し
色濃く描く時間があれば、もっと面白い役になったと思います。
ル・バ役の永久輝せあさんは望海さん、朝美さんといつも一緒。
朝月希和さんは彩風さん演じるダントンの妻、ガブリエル役で、
綾凰華さんはロベスピエールの弟、オーギュスタン役でした…。
こうして書いてみると、主役の二人以外は印象に残りませんね。

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マノン・ロラン夫人・彩凪翔

マノン・ロラン夫人役の彩凪翔さんも意外な配役で、雰囲気も
巧く醸し出していましたが、役としての面白みはなかったです。

う~ん。これはやっぱり生田先生の脚本のせいなんでしょうね。
盛り沢山の内容を1時間半に纏めるのは、やっぱり無理かも…。
でも一本だてをやらせてもらうのは、まだ無理でしょうしね~。
そんなこんなで次回は『SUPER VOYAGER!』の内容を紹介します。