![出陣学徒壮行会.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/12/takuchan-sing/c6/25/j/t02200137_0580036213779827023.jpg?caw=800)
出陣学徒壮行会 明治神宮外苑競技場
1943(昭和18)年10月21日
先日の『学徒出陣』の記事に感化されて、こんな本を読みました。
![文学者の見た世紀の祭典 東京オリンピック.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161020/23/takuchan-sing/7c/18/j/t02200320_0344050013777942148.jpg?caw=800)
『文学者の見た世紀の祭典 東京オリンピック』という本です
![本](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/240.gif)
1964(昭和39)年に講談社から出版された本の再版ですね。
観戦記、観察ルポ、感想記、批評など、作家たちが新聞、雑誌や
新聞に書いた様々な文章を集めたものです。当時、文壇と作家は、
文学とは無縁の一般の人たちにも、それとなく尊ばれていたそう。
それで、新聞も雑誌もスポーツ記者が書く記事で埋まるページに
作家の文章を添えて、文化的な華を加えようとしたのでしょうね。
動員された作家は実に40人に及びます。何れも個性的で面白く、
誰が一番、とは言い難いですけど、やはり三島由紀夫さんが質と
量、共に群を抜いています。全作家中最多となる11本もの文章。
ボクシング、水泳、陸上、と走り回り、美しい文章を綴ってます。
でも、やはり出色の出来だと思うのが、『あすへの祈念』という
杉本苑子さんの書かれた文章です。以前にも記事にしましたけど
NHKスペシャル「カラーでよみがえる東京~不死鳥都市の100年~」の中でも、
コチラの文章が使われていましたよね!それがスゴく印象的で…。
“出陣学徒壮行会”と“東京オリンピック”が同じ会場だなんて
テレビで散々、両方の映像を観てきたのに気づきませんでした…。
![カラーでよみがえる東京.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/22/takuchan-sing/05/b1/j/t02200145_0346022813780286166.jpg?caw=800)
「20年前の、やはり10月、同じ競技場に私はいた。女子学生の
ひとりであった。出征していく学徒兵たちを、秋雨のグラウンドに
立って見送ったのである。学徒出陣壮行会の日の記憶が甦ってくる。
![カラーでよみがえる東京.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/22/takuchan-sing/38/03/j/t02200123_0473026413780338093.jpg?caw=800)
「天皇・皇后がご臨席になられたロイヤルボックスのあたりには、
東条英機首相が立って、敵米英を撃滅せよと学徒兵達を激励した。
音楽は、あの日もあった。君が代が奏せられた。しかし、色彩は
全くなかった。学徒兵達は制服、制帽に着剣し、ゲートルを巻き
銃を担いでいるきり。グラウンドもカーキ色と黒の二色。暗欝な
雨空がその上を覆い、足もとは一面のぬかるみであった。寒さは
感じなかった。おさない、純な感動に燃えきっていたのである。」
![出陣学徒壮行会.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/14/takuchan-sing/4b/70/j/t02200165_0480036013779877464.jpg?caw=800)
「あの日、行く者も残る者も、本当にこれが最後と、何というか
一種の感情の燃焼がありました。この学生達は一人も帰って来ない。
自分たちも間違いなく死ぬんだと。」
![東京オリンピック.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/22/takuchan-sing/37/7a/j/t02200150_0697047413780338676.jpg?caw=800)
光と色彩に満ちた“東京オリンピック”との明暗の対比がね~…。
あまりにスゴすぎて、言葉を失なってしまいますね( ̄~ ̄;)
![出陣学徒壮行会.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/14/takuchan-sing/61/d3/j/t02200130_0474028013779878772.jpg?caw=800)
「あの雨の日、やがて自分の生涯の上に、同じ神宮競技場で世界
94ヶ国の若人の集まりを見る日が来ようとは夢想もしなかった
私達であった。夢ではなく、だが、オリンピックは目の前にある。」
![出陣学徒壮行会.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161020/22/takuchan-sing/37/4c/j/t02200160_0638046413777892721.jpg?caw=800)
「そして20年前の雨の日の記憶も幻でも夢でもない現実として
私達の中に刻まれているのだ。今日のオリンピックは、あの日に
繋がり、あの日も今日に繋がっている。私にはそれが恐ろしい。」
![東京オリンピック.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20161023/14/takuchan-sing/6d/44/j/t02200125_0467026513779879342.jpg?caw=800)
こういうのが“作家の見たオリンピック”って感じがしますね~。
そういう意味では阿川弘之さんと武田泰淳さんはイマイチですね。
私ごときが、こんなことを言えた立場ではないですが(;・ω・)
1964(昭和39)年の東京五輪は商業主義に侵略される前の
最後の大会とされています。オリンピックがが幸せだった時代の
明るさ溢れる文集が、秋の夜長のお伴にイイと思います(°▽°)