見てから喋るか、喋ってから見るか。 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

台詞を喋るとき、まず相手を見てから喋り始める。

 

日常生活では当たり前のことですが、演技となるとこれが難しいのです。日常では、相手に何かを伝えたいとき、まず相手を見ることで相手の様子を探ります。じっくり探ることもあれば、一瞬のうちに探って判断することもあります。相手の機嫌が良いか悪いか、この話題を持ち出して問題があるのかないのか、相手の表情や態度でそれを察知して判断して、言葉を選んで話し掛けるのです。余裕がないとき、あるいは相手に油断しているときなど、喋りかけてから相手を見る場合もあります。しかしそんなときは大抵その直後にトラブルが勃発するのです。

 

俳優はそれらを使い分けなければいけません。ところが多くの俳優は相手を観察しないでいきなり台詞を喋り始めてしまうのです。何故なら台本に書いてある台詞を覚えて、それをどう駆使して喋ろうかと、日常とは別の心理状態で構えているからです。これではテレビ番組の食レポで食べ物を口に入れて、味わいもしないですぐに感想を言い出してしまうお粗末なタレントと一緒です。

 

演技レッスンの中に「エチュード」と言われる訓練方法があります。これはシチュエーションのテーマ与えて、俳優たちに台本無しで会話させるというものです。このとき懸命にその状況に対応しようと必死になっている彼らはみんな名優です。

 

俳優はたとえ台詞を与えられた場合でも(ほとんどの場合はこれですが)相手役の喋ることを良く聞き、相手を良く観察し、気配を感じながらエチュードのときのように対応することが大事なのです。