クラシカル・テイスト満載のイタリアン・ヘビィ・プログレ /ブオン・ヴェッキオ・チャーリー | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

BUON VECCHIO CHARLIEはイタリアで結成されたVo、G、Kb、Bs、Dsにフルート兼サックス奏者まで加えた6人編成のバンドで、アルバムは71年に録音されたものを唯一とするが、リアル・タイムでの本国リリースがあったか否かまでは判らないものの、自身は2000年代になって初めて流通し始めた輸入CDを同好仲間による情報から購入した。恐らく発掘音源?だと思うが、アナログ盤もその後にリリースされた筈。ピカソ調で描かれたインパクトのあるカバーアートが、有名な画家によって描かれたものか否かは判らないでいるが、その外観と中身がマッチした内容をこれから紹介。

そのアルバム内容は、イタリアン・プログレを語る上での最大の特長とも言える美意識が散りばめられたもので、仰々しいまでの劇的楽曲展開は、心地良いカタストロフィーまで伴うクラシカル・テイスト満載の楽曲で占められたもの。収録曲は僅か3曲の大作志向の強い楽曲構成となっているが、その中にあっても組曲形式の大作は15分にも及んでいる。Voにおける歌唱法はロック・シンガーのそれと違って、若干カンツォーネがその背景に感じられるものとなっているが、比較的出番が少ないと言った事や、インプロを主体としたサウンドなるが故にあまり気にならない筈。クラシカル・テイストを特に感じられる部分は先に触れた組曲形式の楽曲や、クラシックから引用したフレーズが登場する事に充分表れているが、フルート・ソロなどはその奏法や使い方などで、明らかにジェスロ・タルを意識した事が判るもの。全体的にはスター・プレイヤーを必要としないバンド・アンサンブルを重視したサウンドで、緻密なアレンジによって奏者における活躍の場はほぼ均等に与えられているが、その中にあっても重厚に鳴り響くオルガンを背景にして、Gを歪ませたかの様な一見効果音の様にも映る、サックスが吹き倒すフリーキー且つアヴァンギャルドなプレイが堪らない。それと並んで突然曲中に短いパッセイジで割って入る、ヘビィで刺激的なファズ音がハードロック的でとにかくカッコイイ。これがイタリアン・ヘビィ・プログレの真骨頂たる部分で、それは緊張感から一瞬解放される、このカタストロフィーを感じる部分が堪らない魅力となっているのだけは確か。

もちろんボトムを効かせた重量感に富んだリズム隊のパワフルな演奏も◎で、先に触れた組曲形式の大作に限れば、余りにも目まぐるしく映る曲展開が短い曲を繋げただけで、全く楽曲における本質の部分が見えて来ないのが残念で、個人的には中々それに付いて行けず、聴いた上での率直な感想としては少しやり過ぎでは?と言った処。

 

        71年制作アルバム

 

このアルバムは今でも再発CDなら充分入手出来ると思えるのですが、上に挙げた個人的なネガティヴ材料さえ無視すれば、ハードロック・ファンの方だけに限らず、イタリアン・ヘビィ・プログレが好きと言った方々には間違いなくお薦め出来る一枚だと思えます。