ヘビィ且つ官能的なGワークが冴える少しフュージョン・タッチのハードロック /イル・ヴォーロ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

IL VOLOはイタリアで結成された六人編成のバンドで、そのラインナップはVo兼Gx2、Kbx2、Bs、Dsから成るもの。元フォルムラ・トレのVo兼G奏者アルベルト・ラディウスとKb奏者の二人が参加している事で、当時少しは話題になったが、他のメンバーもイタリア・ロック・シーンではバンド経験のある、比較的知名度の高いスタジオ・ミュージシャン。アルバムは74年に1st、そして翌年の75年に2ndがリリースされたが、レコード会社主導によるアルバム制作であったせいか、余り売れなかった事を理由にその後解散。ただ日本では傑作としてそれなりに支持者は多く、情報の少なかったイタリアン・プログレ・バンドにしては、コレクターの間ではそれなりに評価され現在に至っているもの。

二枚共に楽曲におけるクォリティーはほぼ同等で、ツインKb体制といった事でサウンド面においてはシンセやメロトロンを含めたKb群を前面に押し出しているが、その内容は御多分に漏れず全編に渡ってイタリアン・プログレらしく、抒情的でファンタジックな楽曲がほとんどを占めたもの。1stアルバムはG奏者に活躍の場が多く与えられた、少しクラシカルとも眼に映るヘビィ・プログレ路線。2ndアルバムはKb群が更に前面に出て活躍する、どちらかと言えばジャズテイストの感じられるクロスオーバー的なサウンドで、所謂オルガン音が軽いエレピの音を醸す、フュージョン・タッチのサウンド展開といった処。それが故にハードロックとして楽しめるのは1stアルバムといった事になるが、世間の評価では2ndアルバムの方が何故か評価が少し高いのが気になる処。これはイタリアン・プログレ・ファンの方だけを対象とした評価なのかもしれないが、、、

自身はあのアルベルトがGで参加していると言っただけで、直ぐ輸入アナログ盤を購入した一人であるが、彼のヘビィー且つエモーショナルなGが聴ける1stアルバムの方が間違いなく好みで、そのドラマティックに展開される楽曲の数々は、当時のロックシーンにおける一つの流れとなった、ジャズ+ブルース+クラシックのクロスオーバー的アプローチではあるものの、メリハリの効いた重量感溢れるDsサウンドは紛れもなくハードロック・テイスト。それが故にグルーヴ感に富んだ良く歌うBsと並んで実にカッコイイ!もちろんアルベルトのヴァイオリンの如き音を奏でる、粘りのある官能的なGソロがカッコイイ事は今更言うまでもないが。

 

    74年1st 75年2nd

 

ハードロック・リスナーの方々にとっては、このフュージョン・タッチのサウンドが好きか嫌いかで間違いなく評価が二分すると思えるのですが、1stアルバムはイタリアン・ヘビィ・プログレの良さを知る方には充分推せる様な気がします。ただ文句なくお薦め出来ると言えなかったのは、アルバムとしての完成度は非常に高いのですが、曲の背景や伴奏だけならまだしも、主旋律まで奏でるポップ的要素の強いシンセ垂れ流しのサウンドが、明らかにレコード会社の要望に沿ったものと感じるが故に、それが余りにも残念といった理由からです。個人的には2ndアルバムにはハードロック・テイストがほとんど感じられなかった事から、特にお薦め評価はしなかったのですが、1stを更にフュージョン化したイタリアン・ロックが好きと言った方々には、取り合えずお薦め出来るかもしれません。