Gを基軸とする抒情的でありながら疾走感に富んだ楽曲は正にブリティッシュ・ハードロック /ストレイ | ハードロックは我が人生そのもの

ハードロックは我が人生そのもの

70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

STRAYはイギリスで結成されたバンドで、バンドにおける主要メンバーの一人が亡くなるまで存続していた、世界を股にかけて活躍し今まで数多くのアルバムを残したメジャーバンドの一つ。ただ今もそうである様に、70年代における日本での人気は?マークが付くもので、著名バンドの多くが来日公演を果たしたにも拘わらず、当時日本では何故か全くお呼びのかからなかったバンド。

メンバーはVo、G、Bs、Dsの四人編成で、デビュー作は70年にリリースされたものの、日本盤LPによるデビューはそれから約3年後となった。もちろん今では国内盤CDがリリースされた事によって、ほとんどのCDを買い揃える事が可能な状況となったが、自身が直接手にして聴いたものは自ずと輸入盤LPという事になるが、結果的にはCDで75年までにリリースされた合計6枚を揃えた事になった。その中で今回特に紹介するのは、自身がバンドにおける最高傑作と位置付けている70年1stアルバムと、そのサウンドを踏襲した形の71年2ndアルバム。

まず1stアルバムの内容は、ハードロック黎明期とも言える70年にありながら、サイケやブルース臭さをほとんど感じさせず、若さに任せて突っ走る楽曲の数々はドラマティックで疾走感にも富んだ、ヘビィ且つハードに迫るメロディアスなR&Rで、もちろん当時としても今聴いても非常に新鮮と眼に映るもの。その中にあっても特にG奏者の活躍は目覚しく、ハードロック然とした馴染み易いリフや練られたフレーズは、アレンジ・センスまでも感じさせてくれるもので、ハードロック・リスナーの耳を最後まで捉えて放さない。もちろんGソロも同様で、間奏における引き摺るが如く太く歪んだファズ音は、流石に70年における音であるが、それがスピード感のある楽曲と少しミスマッチした部分が逆にカッコイイ!特に歪の少ないアコギとファズ音で弾き分ける楽曲はドラマティックとも眼に映るもので、全8曲捨て曲と感じられるものは全く無く、リスナーにとってはそれが最大の魅力で一番満足の行く部分。もちろんリズム隊における技量も文句ないが、特にBsにおけるボトムを支えながらも良く弾み良く歌うベース・ラインが心地よい。

ただ歌メロやアレンジが良く練られている完成度の高い楽曲の数々も、全体的には同じテンポの曲が多過ぎて、全曲通して聴く分には少し飽きを来させるのが唯一の難点。

71年2ndアルバムは洗練された分更に楽曲にキャッチーさが増し、メロトロンなども導入して少しサウンドが仰々しいものとなり、それと並んでG奏者がジャズ・テイストに富んだ速弾きソロを弾き倒す部分も多くなったが、抒情的要素を加えながらもよりドラマティックなサウンドへと若干ながら変貌。ただ疾走感に富んだ楽曲がアルバム全体を支配している部分は相変わらずといった処で、それが故にどの楽曲も似たり寄ったりという部分が1st同様飽きを来させる原因となっており、リスナーにとってそれを由とするか否かは間違いなく評価が分かれる部分。ただ1stアルバム同様どの曲も完成度が高く、捨て曲と映る曲がないのが最大の魅力で、各楽器におけるバランスの取れた録音の良さまで加味すれば、先に触れた僅かな欠点などは全て覆い隠されるほどの傑作。

 

 70年1stアルバム 71年2ndアルバム

 

ちなみに3rdアルバム以降も74年5thアルバムまでなら、ハードロックとして充分聴けるのですが、それ以降は更にポップ・テイスト(ハード・ポップ?)満載な上、どこをとっても金太郎飴的に映る似たり寄ったりの楽曲の数々は、自身における好みもあるのですが聴く機会が全く無くなりました。よって自身がハードロック・ファンの方に自信を持ってお薦め出来るのは、上に挙げた70年1stと71年2ndアルバムの二枚という事になる様な気がします。このバンドがリリースしたアルバムは、新中古盤を問わずCDなら今でも容易く入手出来ると思えますが、ここでバンド名を初めて耳にされた方は先に触れた二枚から先に聴く事をお勧めします。