轟音と呼ぶに相応しい荒々しいほどのファズ・サウンドを特長とした英国産ハードロック /ダーク | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

DARKはVo兼G奏者であるスティーヴ・ジャイルスが中心となって他にG、Bs、Dsが加わってイギリスで結成されたバンド。アルバムは72年に自主制作盤として一枚だけリリースしていたが、69年から71年に跨って録音されていたものが、近年発掘音源編集盤として初CD化された。自身は2000年代に入って直ぐに初発CDを購入したが、2ndアルバムとなる発掘音源CDには11曲もの収録曲があり、その中数曲は1stアルバムと被るものの、アウト・テイクとは思えないほどのクォリティで、恐らく1stアルバムとして準備していたデモ音源だと思われるが、意外にも満足感の味わえる充実した内容。

まず72年リリースの1stアルバムは、ナチュラル・ディストーション音が主流となった72年録音にも拘わらず、スティーヴを含めた両G奏者が全編に渡って歪み切った荒々しいほどの派手なファズ・ギターを奏でるもので、それが故にサウンドはヘビィで分厚いものとなっている。もちろんタイトで締まった音を特長とするDsや、よく歌うノリの良いBsの存在感も忘れてはならないが、これもヘビィでハードなサウンドを決定付けている要因。ただこの轟音とも言えるファズ・サウンドと、一人の女性が物憂げに窓の外を見つめるスリーヴ・デザインや、中低域を中心としてさりげなく歌うVoが余りにもミスマッチとも感じられるが、歌メロがよく練られているので、これもバンドにおける独自性と思えば充分納得して聴ける筈。

 

実質上の1stアルバムとも言える2ndアルバムはメンバーは固定されておらず、録音された場所も状況も異なる事から楽器におけるミックスも、録音時における音質もそれぞれ異なったものとなるが、曲によってはオルガンが加わったりSEによって曲に味付けしたりと、全体的にはサイケを色濃く残す内容となっている。もちろんここでも引き摺る様なヘビィなファズ音を奏でるG奏者が活躍しているが、それはバンド主導権を握ったG奏者なるが故にといった処。発掘音源にしては意外にも録音はクリアーで、しかも各楽器における分離も良く、正規録音でもこれ以下のものが数多くある事を鑑みれば、発掘音源といった事はほとんど感じさせないので◎。全体的にそのサウンドはヘビィ・サイケといった処。

 

72年1stアルバム   69年~71年発掘音源

 

この二枚のアルバムに共通している部分は、ブリティッシュ・ロック特有の湿り気やダウナーな部分、あるいはインテリジェンス、それにブルースに根差されたG奏者が轟音ファズを奏でる部分で、これにマイルドなVoが被さり合って創り出された独自性のあるヘビィ・サウンドは、ブリティッシュ・ロックの真髄ここにあり!といった音だとも思えました。よってハードロック・ファンの方々はもちろん、ヘビィサイケ・ファンの方々には自信を持ってお薦め出来る二枚といった事になりそうですが、間違いなく期待に応えてくれる筈です。