サイケを醸すサウンドではあるが熱唱Voや弾き倒すGは紛れもなくハードロック /フェルト | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

FELTはアメリカで結成されたVo兼G、G、Bs、Ds、Kbの5人から成るバンドで、これから紹介するアルバムは71年に名もなき弱小レーベルからリリースされた、コレクターズ・アイテムの一つ.として非常にレア度の高いアルバム。結果的にはこの一枚を残してバンドは解散したが、もちろん後にビッグネームとなった人物はメンバーの中には一人もいない筈。自身は全く予備知識のないまま、アルバムにおける少し気味の悪いスリーヴ・デザインに何故か惹かれ、店頭で衝動買いをした一人であるが、これが意外にも大当たりで、その2000年代になって初めてCD化されたアルバムをこれから紹介。

そのサウンドをアバウトに一言で語れば、ビートルズ+ドアーズがシャウト系熱唱VoとアグレッシヴなGを迎えて制作した、ブルース・テイストを感じさせてくれるサイケ・ハード・アルバムと言った処。もちろんサイケの特長とも言える常に曲の背後で鳴り響くオルガンは、主旋律を追いながらも間違いなく存在感は醸しているし、重量感に富んだリズム隊に支えられた楽曲の数々は充分ヘビィ。中でも一番ハードロック・テイストを醸すのがナチュラル・ディストーション音を特長とする二本のGで、時としてツインリードでブルージーなソロを奏でたり、ワウ音による派手なソロを炸裂させたり、更に速弾きフレーズを連発したりと目覚しいばかりの活躍振り。歌メロが比較的キャッチーでメロディアスな曲に限れば、ビートルズが演奏しても決して違和感の感じられないものであるが、弾き倒す二本のGと熱唱型Voが絡んだ曲に関してはビートルズやドアーズとは全く異なるハードロック感性。曲によってはアシッド感の漂うサザーン・ロック的な感性も見え隠れするが、良い意味でこのごった煮感が最大の魅力。それはドラマティックに展開される曲やバラエティに富んだ楽曲にも充分表れているが、捨て曲もなく最後まで全曲通して聴けるのも魅力の一つで、71年当時リアルタイムでこのアルバムを聴いていたとすれば、間違いなく時代遅れのサウンドと感じるのかもしれないが、二年後にビートルズが演奏しても決しておかしく感じられない楽曲の数々は、今だから新鮮に映る非常に完成度の高いもの。とにかくサイケ色は顔を覗かせるものの、色んなエッセンスを取り込んだオリジナリティに富んだ良質なハードロックといった事だけは確か。ただ長尺曲がないにも拘わらず、アルバム収録数(全6曲)の少ない事が唯一のネガティヴ材料。

 

               71年アルバム 

 

認知度が非常に低く、ほぼ無名に近いこのバンドがリリースしたレアなアルバムが、今でも容易く入手出来るとは思われない?のですが、近年CDが再発されているのでしたら話は別です。ハードロック・ファンの方にお薦め出来るのは言うまでもありませんが、サイケ・ハード・ファンの方々には背中を押してでもお薦めしたいアルバムの一つです。間違いなく期待に応えてくれると思えます。