ゲイリー・ムーアのバンドとしてのデビュー作がジャズ・テイストの残るこのアルバム /スキッド・ロウ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

SKID ROWは近年フィギア・スケートにおけるプログラム曲として余りにも有名となった「パリの散歩道」の作者であり演奏者でもある、ゲイリー・ムーアと他リズム隊二人を加えた三名で結成されたイギリス出身のバンド。もちろんG・ムーアはまだ10代でアイルランド出身者でもあるが、その若さに任せて制作されたアルバムがこれから紹介する、70年デビュー作と71年にリリースされた2nd「34アワー」で、間違いなくハードロックとは呼べるものの、どちらのアルバムもジャズ・テイストの濃い少しカオス的なアルバムとなっている。しかもブルース・テイストまで含むもので、これはグラウンド・ホッグスのギター奏者トニー・マクフィーにおけるサウンドにかなり近いもので、このサウンドを言葉で表現するのは中々難しい。良い意味でトリッキーで、それが故に独創的にも映る少し奇妙なハードロックといった事になろうか。

後におけるソロとしてのゲイリーの活躍を思えば、彼のGテクニックを今更語るまでには及ばないとは思うが、少しキャッチーな楽曲は後におけるソロ活動の成功を多少なりとも予見させてくれている。とにかくギタリストとしての技量もさることながら、作曲センスまでも感じさせてくれるもので、Voパートはあるものの、正に当時におけるゲイリーのGテクニックの全てを注ぎ込んだギター・アルバムといった処か。

リズム隊の二人の中、Dsは手数の多いテクニシャンで明らかにジャズ畑出身者、Bsもトリオ編成の弱点といった部分を、音数を多くする事で見事にカバーしているし、このサウンドには充分はまったもの。この二人が後でビッグ・ネームとなったとは聞かないが、この技量からすれば他のバンドでの活動は続けていたのだろう。

この二枚のアルバムのどちらが好きかと尋ねられれば、まだサイケ色の残る70年代初期のサウンドにすれば余りにもプログレッシヴで、個人的には間違いなく新鮮な感動を与えてくれた1stという事になろうか。ただどちらも甲乙付け難いものである事だけは確か。

 

        1st      2nd

 

バンドが唯一残した二枚のアルバムは、今でも通販で購入する事が充分可能と思えますが、爽快なハードロックとは言えない部分が少し評価の分かれる処で、ここで初めてこのバンド名を耳にする方は、YOUチューブでも音源は拾えると思えますので、是非そちらで一度を聴いてから購入されては如何でしょうか。

自身はゲイリーが近年他界するまでに残したアルバムは全て所有しており、日本初公演から始まり、その後の公演にも何度か足を運びましたが、名立たる一流ミュージシャンを揃えたバンドで行われたライブは印象に残る素晴らしいものでした。特に名曲「パリの散歩道」は、、、今となってはDVDで臨場感を味わうしか出来ないのが非常に残念ですが、ハードロックとしてはソロ活動時のアルバムの方が遥かにキャッチーで聴き易く、兼任したVoも曲のクォリティーも遥かに高く感じられます。ゲイリーのファンを自認する方であれば、Gルーツを探る上でも是非手元に置いておきたいアルバムの一つだと思います。