チープなバンド名からは想像も付かないオルガン及びギターを主軸とした様式美サウンド /フランピー | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

FRUMPYはフランス人のキーボ-ド奏者ジャン・ジャック・クラヴェッツを主軸とし、既にベテランVoの域に入っていたドイツ人女性シンガー、インカ・ランフを迎えて結成されたバンド。ここではドイツでアルバムが最初にリリースされた事から、ジャーマン・ハードロックのカテゴリーに入れたが、実際にはドイツとフランスの混成バンドである。

このチープ過ぎるバンド名と、ダサ過ぎるアルバム・ジャケットからは全く想像も付かないヘビィサウンドがアルバムから飛び出すのだが、それにしても間違いなくポップ・テイストと思わせるジャケットデザインとバンド名だけは何とかならなかったものか、、、ドイツにはこういった外見と内容のギャップが余りにも激しいバンドが多いような気がするが、自身が最初にアルバム・ジャケットからそう思っていた様に実に頂けない!

結果的にこのバンドのアルバムは、ライブ盤も含めれば四作発表されているが、今回特に紹介するのは、最高傑作とも言える71年にリリースされた2ndアルバムで、ここからこれでもかこれでもかと弾き倒す、硬質で美しいフレーズを連発するGにチェンジしたが、これが正に的を得たもので、女性でありながら男性ボーカリストの声質を持つワイルドで表現力豊かなVoの良さや、更に重厚でありながら突き刺さる音に変化したKbまで引き立てるものになった。Dsは無名ではあるが手数が多いジャズ系ドラマーで、その表現力やノリの良さには脱帽、とにかく普通に上手く更にシンバル・ワークにも優れ、切れ味と重量感に満ち溢れたDsサウンドそのものが良い。

この2ndアルバムにはたった4曲しかクレジットされていないが、楽曲における全てがKbとGによるバトルで、ドラマティックで長尺なインプロビゼイションを含んだ聴き応えのあるもの。もちろんここでのKbはGと共に正に独壇場とも言えるもので、Voもその中にあっては負けず劣らずの存在感、この野性味溢れる表現力豊かな歌唱法は彼女の真骨頂で、正にドイツ版の八代亜紀といった処か、とにかく破壊力抜群の圧倒的歌唱力!ちなみに八代亜紀の凄さを物語るロック・アレンジされた「石狩挽歌」は、3コード進行のBBキングの曲にも似たブルース・ロックとも言えるもので、曲も良いが彼女の本当の意味での凄さが判る名演の一つ。

             71年 2ndアルバム

2ndの楽曲が多く含まれた、72年からのライブ・ツアーの模様が録音されたライブ盤もついで紹介しておきたいが、自身は最初にこのライブ盤を中古で安く入手し、そのドラマティック(様式美)でハードなサウンドにはまった一人で、クラッシックにインスパイアされたかの様な、名の知れないG奏者の奏でる速弾きを含めた美しい音、J・ロードよりアグレッシブなハモンドによる歪んだ重厚な音、更に性別不明とも言えるVoの魅力に憑りつかれたのを覚えている。ここでは2ndアルバムの楽曲をそのまま生演奏したらこうなるといった、アドリブを加えた形の熱の籠った演奏が全てに渡って展開されているが、もちろんライブにおける名盤の一つとして加えても良い作品。

70年のデビュー作は2ndと比較すれば、少し楽曲のクォリティーは落ちる(捨て曲がある)ものの、名曲「インディアン・ロペ・マン」も含んだ楽曲の数々は、先に挙げた2作目さえ先に聴かなければ、これもKbにGが絡むサウンドとしては充分傑作と呼べるもの。

72年~ライブアルバム  1stアルバム

三作目からサウンドは様式美から少し変わりファンキーさを増しましたが、自身がファンキー系サウンドを少し敬遠(様式美万歳!)している事も相俟って、今回はその内容に触れるまでには至りませんでしたが、四作品何れもCDで全て揃える事が出来ると思います。まずは先に2ndとライブ盤を入手される事をお薦めしますが、70年代ハードロックが好きな方であれば、間違いなく期待に応えてくれる筈です。