昔あるところに一人の農民がいました。

 

男は朝から晩まで毎日一生懸命働きました。

 

しかし、収穫の時期になると領主が来て年貢としてほとんどの作物を持って行ってしまいました。

 

男は粟や草木の根、時には虫など食べ飢えを凌ぎ、必死に働きました。

 

家の壁は穴だらけで冬の隙間風で眠れない日もありました。

 

それでも男は一生懸命働きました。

 

しかし、ある朝男は冷たくなりました。

 

男は、あの世で「あれ」に生まれ変わりたいかと聞かれました。

 

男は、「もうあんな生活はこりごりだ。」と言いました。

 

「あれ」は、「次生まれ変わる世界は、飢えや寒さに苦しむことなく、毎日おなか一杯食べれて、温かい布団で寝れ、命の危険がない世界である。」と言いました。

 

男は、「それはまるで殿様のような生活ですね。そんな世界があるのなら是非生まれ変わりたいです。」と言いました。

 

「あれ」は、男を生まれ変わらせてやりました。

 

生まれ変わってから32年後、男は自殺しました。

 

あの世で「あれ」は男に聞きました。「なぜ自殺をしたのか。」

 

男は、「働くことと人間関係に疲れた。」と言いました。

 

男は「あれ」に、次生まれ変わる世界はどんな世界なのか聞きました。

 

「あれ」は、「次の世界は労働のほとんどをロボットが行って、大半の人間は労働をしない世界だ。」と言いました。

 

男は、「その世界に生まれ変わりたい!」と言いました。

 

「あれ」は、「君は自ら生を断ち寿命を全うしなかったので次にはいけない。次に行くには前回の世界をもう一度やり直す必要がある。」

と言いました。

 

男は少しぐずりましたが、あの世では特にやることもないのでもう一度チャレンジすることにしました。

 

「あれ」は、男を生まれ変わらせた後一つため息をつきました。

 

「いつになったら人間はこの輪から抜けるのだろう。進むべきは前ではなく上だというのに。」