『ミーヤの戦略』
月曜の朝。
オフィスに射し込む陽射しが眩しい。
しかし、それより眩しいのは――ミーヤの今日の装いだった。
白のブラウスは、ボタンが一つ多く外れている。
動くたびに揺れるネックレスの先に、レースのキャミソールがちらりとのぞく。
スカートは相変わらずタイト。
だが今日は、椅子に座ると確実に“中身が見える”長さ。
もちろん、見えてもいい。
なぜなら、それは“見せパン”――見せるための武器だから。
「おはようございまぁす♡」
今日もミーヤの声が、職場の男たちの耳を蕩けさせた。
「お、おはよう……今日、なんかいつもと違う、というか……」
佐川はどこを見ていいかわからず、視線をあちこちに泳がせる。
「え〜? なんですかぁ〜? 佐川さん、変なとこ見てたでしょ〜?♡」
「み、見てない見てないっ!」
ミーヤは、椅子に腰を下ろすとき、
あえてゆっくりと、片足を組み替える。
「えへへっ……スカート、短すぎたかなぁ?」
佐川の視界に、黒のレース地の“見せパン”がくっきり映り込む。
(やばい……これ、完全に……)
顔を赤らめ、佐川は慌ててモニターに目を向ける。
だが、タイピングが明らかに早すぎて内容が滅茶苦茶だ。
「……佐川さん、顔赤いですよぉ?」
「い、いやいや、熱があるだけっ……きっと……」
ミーヤは唇に指をあて、小首をかしげて微笑む。
「ふふっ♡ 佐川さんって、ホント可愛いなぁ〜」
その一言で、佐川のHPはゼロになった。
『佐山、動揺』
佐山は、今日も理性の防衛ラインを維持しようと努めていた。
(俺は既婚者……MISIA命……ミーヤの罠にかかるわけには……)
だが。
ミーヤは、今日彼の“逆に”を一度もスルーしなかった。
「逆にですね……」
「えっ、逆にってどういう意味ですかぁ〜?♡」
彼女は、顔を近づけてきた。
目が合う。
距離、10センチ。
そしてその瞬間――かがんだ彼女のブラの内側が、ふっと浮いた。
淡いピンクのブラのレースと、その内側が……。
(見え……た……)
佐山は目をそらそうとした。
だが、脳は正直だった。
目に焼きついて離れない。
「……どしたんですかぁ? 顔、真っ赤ですよ?」
「いや……その……逆にですね……」
言葉が出てこない。
いつもの“逆に”が、言葉にならない。
(これが……戦争……)
佐山は、自分がすでに包囲されていることに気づいていなかった。
『会議室での密室トラップ』
午後の定例ミーティング。
開発会議と称した小さな会議室で、佐川と佐山、ミーヤの3人。
ミーヤは、あえて一番狭い席を選ぶ。
そして、両サイドには佐川と佐山。
「すみませ〜ん、ちょっと……狭くてぇ♡」
わざと身体をくねらせ、密着するように座る。
「うっ……いえ……大丈夫です……」
佐山の肘がミーヤの太ももに軽く当たる。
「きゃっ♡ 佐山さん、ちょっとぉ〜〜〜♡」
「す、すみません! 今のは偶然……いや事故……逆にっ!」
「ふふっ、もう〜、佐山さんって、ピュアなんだからぁ♡」
ミーヤの声は囁くように甘く、耳元でくすぐるように届く。
その瞬間、佐山の理性ゲージが一目盛り減った。
一方、佐川。
ミーヤは彼のノートを覗き込むフリをして、身体を乗り出す。
その胸元から、完全に“ブラチラ”。
「わ〜、佐川さんって字、キレイなんですねぇ♡」
「そ、そうかな!? いやぁ〜、まいっちゃうな〜〜〜……」
(完全に見えてる……完全に……俺、今、男として合格……?)
佐川の思考はもはや昇天寸前だった。
会議内容? 誰も覚えていない。
議事録? 書かれていない。
そこにあったのは、“誘惑”と“理性の崩壊”だけだった。
『ターゲット・佐山』
数日後。
美夜は狙いを絞った。
(佐川さんとサカッチはもう余裕。あとは……ムッツリ義人さん♡)
夕方、佐山が一人で作業しているタイミング。
「ねぇ……佐山さん……ちょっと聞いてもいいですかぁ?」
「ん? 何ですか?」
「今日、下着……透けてないですかぁ?」
「……っっ!?」
「ちょっとブラウス薄すぎたかな〜って……心配でぇ……」
「い、いや、そんな……だ、大丈夫……だと思いますよ……?」
「そっかぁ……♡ よかったぁ〜。じゃあ、佐山さんだけに……見せちゃおっかな♡」
「!?!?」
ミーヤは小声で囁き、そっと袖を引いた。
すると、脇からチラッと……淡いレースのストラップが。
「ねっ、透けてないですよねぇ?♡」
佐山は固まった。
身体も、思考も、魂までも。
「さ、さささ佐山さん〜? 顔、真っ赤ですよぉ〜?」
ミーヤは、いたずらな笑みを浮かべ、ぴたりと距離を詰める。
「ねぇ……もしかして……ドキドキしてますぅ?♡」
「……逆にですね……これは……事件です……」
佐山、陥落寸前。
『ミーヤの独白』
退社後、ミーヤはスマホを見ながら独り言。
「ふふっ……今日も順調♡」
佐川は“完全なる手玉”。
坂田は“自己陶酔ルート”。
佐山は……“今、一番楽しいところ♡”。
恋なんてする気はない。
でも、男の理性が崩れていく瞬間が、たまらなく快感。
(明日は……もっと激しくいこうかな♡)
ミーヤの次なる罠が、また仕掛けられようとしていた――。
