名古屋にいた頃、実家から少し離れた八田という所にアパートを借りて住んでいた時期があった。
とても狭いけれど、メゾネットタイプの、なかなか面白い間取りの部屋だった。
親には「マッチ箱みたいな外観だね!」と揶揄されていたが、自分的にはそんな外観がたまらなく愛おしいと思っていて、結構気に入っていた。
だけど家族が病気で倒れ、一時的に実家の人間を支えるため、実家に戻らなくてはならなくなった。
当然、そのアパートからも出て行くことになった。
その時の自分の心境としては、家族が倒れたことはもちろんとんでもなくショックだったけれど、それ以上に、そのアパートとサヨナラしなければならないことが悲しくて仕方なかった。
実家からも割とすぐの距離にあって大通りにも面していたため、引っ越し後もそのアパートはよく目に入っていた。
引っ越してしばらくは、プチ鬱状態になっていたと思う。
いつか家族のことが解決したら…、必ずまたこのアパートに戻ってくるからね
なんて思ってた。
あまりにも落ち込んでいて、周りの人間も呆れていた記憶がある。
結局そのアパートには戻ることはなく、今度はもう少し実家から近い、岩塚近くの賃貸物件を借りることになった。
岩塚駅徒歩1分という、めちゃめちゃ便利な立地に惹かれてしまったからだった。
岩塚で住むようになり、そこの賃貸物件も非常に独特な間取りをしていて面白かったから、すぐにまた気に入った。
ほどなくして、あれほどいつかまた住みたいと思っていたマッチ箱アパートに対する熱い気持ちが消えていくのが分かった
そして同様のことが、これまでに何度もあった
なんてことを思い出していた。
きっと自分みたいな奴は、どこでも住めば都なんだろうなと思う。