12月20日本多劇場19時開演の
直人と倉持の会Vol.2「磁場」を観に行きました。
ネタバレありますのでお気を付け下さい。
<タイムテーブル>
<作・演出>
倉持裕
<出演>
竹中直人、渡部豪太、大空祐飛、長谷川朝晴、
黒田大輔、玉置孝匡、菅原永二、田口トモロヲ
<あらすじ>
あるホテルの一室。売り出し中の若いシナリオライター
(渡部豪太)は「そうぞ納得いかれるまで書いて下さい。
いつまでもお待ちしています」と理由もなく、
ある大富豪(竹中直人)から過剰期待をかけられ、
映画の脚本執筆のため、缶詰になっている。
「期待」に応えようと奮闘する作家は、
次第にその重圧に押しつぶされていく。
ある者は吸収され、ある者は排除され、
次第に正気を失っていく人々を巡る心理劇。
ライターが缶詰になるホテルはバルコニー付きのスイートルーム。
日系アメリカ人芸術家のマコト・ヒライを題材にした
映画を作るべく、ライターの柳井(渡部豪太)、
プロデューサーの飯室(長谷川朝晴)、監督の黒須
(田口トモロヲ)が集められ、話し合う。そこへ大富豪の
加賀谷(竹中直人)が秘書の赤沢(菅原永二)と登場。
身の回りの世話をする客室係の時田(玉置考匡)、
加賀谷が映画に出演させてほしいと、制作サイドに
紹介する駆け出しの女優・椿(大空祐飛)、
ライターと同じ劇団に所属する役者・姫野(黒田大輔)と
加賀谷をとりまく人々が、思わぬ方向に向かっていく。
加賀谷は、マコト・ヒライについてのこだわりが凄く、
その描き方について、監督と激しくぶつかる。
間にはさまれてあたふたする飯室が大変そう。
加賀谷役の竹中さん、ライターの柳井をリスペクトして
ほめ殺し状態。秘書の赤沢には厳しく、ふり幅が激しくて
別人のようだった。加賀谷に良かれと思ってシナリオの
期限を早めた事がバレた赤沢、加賀谷にステッキで
ボコボコにたたかれて血まみれ。
加賀谷に紹介された女優を起用することを拒んだ
監督に対して、触れられたくない過去を持ち出して
監督をやりこめる加賀谷。その後しばらく姿を消した
監督が、次に現れた時には髪が白髪になっていた。
そんな緊迫した現場で、空気を読まない客室係の
時田の言動と、ライターを目指しながら柳井を
手伝いに来た同じ劇団の姫野がチャラく、
いい加減で、場にそぐわず、面白かった。
マコト・ヒライをいう人物をあえて登場させず、マコトを
とりまく人物だけを登場させて、マコトという人物を
浮かび上がらせるという表現方法での脚本を書き終えた
柳井だったが、それに納得できない加賀谷は大激怒。
柳井を担当からおろし、その場にいた劇団仲間の姫野に
執筆を依頼。ホテルを出る準備をしていた柳井に
自分の手に負えない仕事を安易に引き受けてしまった
姫野が手伝ってくれと泣きつく。
マコト・ヒライの資料や文献を読むように促すも、
面倒くさい、となげやりな姫野。
加賀谷が参考の為にと、ホテルに送ってくれた
彫刻もロクに見ようともせず、他力本願な姫野に、
箱の中をもっとちゃんと見ろよ、と言いながら、
バルコニーに置いた椅子の上に乗った姫野に近づき、
静かに押して、最上階から転落させる柳井。
舞台やドラマでの殺人シーンでは、事前に心の声で
恨みつらみを台詞にしたり、背後から忍び寄ったり、という
「今から殺人が起きるぞ」という事前行動のようなものが
あるのですが、ここでは突発的に、まるで
物をどかすかの如く、姫野の足をフイッと軽く押し、、
何事もなかったかのように座っている柳井に衝撃を受けた。
瞬きをしている程度のあっという間の出来事。
「現実世界の殺人というのは、きっとこんな感じなんだ」
というリアル感がじわじわと伝わってきてドキドキした。
静かな時間が流れた後、救急車やパトカーのサイレン音が流れ、
顔色を変えながら部屋に入ってきた加賀谷が、
「大丈夫。俺がなんとかする。大丈夫だ」と
我に返って動揺する柳井を抱きしめながら繰り返す。
大丈夫って…有能な弁護士でも雇って、事故だったことに
するという事なんだろうか…と考えていたら終演。
その後の柳井と、マコト・ヒライの映画はどんな風に出来たのか、
とっても気になるラストだったが、面白かった!
タイトルの磁場というのは、大富豪の加賀谷の事なのかなぁ。